253話 6月17日#04
『どうやら『パズズ』さんは、人間に対して友好的なモンスターだったみたいですね』
俺たちがオリオンにある小さな食堂で夕飯を食べていると、ピエール33世はそう言った――オリオンは小さな街で、食堂も数軒しかなかった。
『みなさんご存知『フュルフュール』というモンスターも、確か人語を話してそんなに好戦的ではないと聞いたことが……まあ、あれは嵐の中でしか見られないモンスターなので、悠長に話している暇なんてないと思いますが』
「じゃあ、あの時、俺たちは戦う必要なかった……?」
俺は、リアに巨大なドラゴンの頭へ雷を落とさせたときのことを思い出した。
『嵐に耐えられれば、そうですね』
そして、ピエール33世はピコンと白く光った。
『あ。でも、そんなに気にする必要はありませんよ。どうせあのくらいの攻撃、蚊が肌に止まって血を吸った程度にしか感じてないと思います』
「それはそれで、なんか悲しい……」
「……それにしても、あの『キングヴェノムドラゴン』……星霊使いが3人いて、あんなに手こずるなんて、図鑑で見るより恐ろしいヤツだよね」
テンは水を飲みながら、ぼんやりと物思いにふけっていた。
「あれ、『レジェンダリ』より強くないか?」
レイは、むしゃむしゃ食べていた。
『あの亡くなっていた方、『キングヴェノムドラゴン』にやられたんですね……本当にかわいそうですよね』
ちなみにその人については、街を守る兵士たちに話をして、その後のことは任せてある。
「とりあえず、みんな無事でよかった……」
「……ソラの言うとおりだな」俺は、テーブルの上の肉料理を中央に引き寄せた。「とりあえず、食おう。考えるのは、その後だ!」
俺たちが泊まった宿の主人は、やたらよくペラペラしゃべる人だった。
「……という感じで、ウチのわんこは、本当に人が大好きになって……!」
「な、なるほど……」テンは犬を抱いて、顔をぺろぺろ舐められながら話を聞いていた。
「でも、そうそう。この前は、泥棒を追い払ってくれたんですよ。思いっきり吠えまくって!」
「泥棒?」
「そう!最近出てきててね……私はチラッとしか見てないんだけど、噂どおり黒い『目出し帽』を被って黒い服を着ている、いかにも怪しい奴で」
「……テン。そろそろ寝よう」俺は椅子から立ち上がった。「お話はまた明日聞きますので、俺たちはこれで……」
「……あ。でも、本当に気をつけてよ」宿の主人は、心配そうに言った。「その泥棒、よくわからない変なものまで盗むらしいから」
「へ、『変なもの』?」
「確か、もう終わった闘技場の試合のチケットとか、子どもが手に持ってたキャンディとか……そういう、どう考えても役には立たなそうなものまで盗むらしいの」
――そんな話、どこかで聞いたことがある。
「……ま。今日はゆっくり休んで」宿の主人も、ようやく立ち上がった。「明日出発するんでしょ?早く寝た方がいいと思うわ」
それから主人は「ローズちゃん、行こ」と犬に呼びかけ、カウンターの奥へと姿を消した。
「あー。毛だらけになっちゃったね」テンは自分のシャツを見て、苦笑いした。「寝る前にブラッシングして毛を落とさないと」
「そうだな。明日も早いし……」




