251話 6月17日#02
その後、俺たちは再び目的地『オリオン』へ、『バグボート』に乗って飛んでいき始めた。
しばらくは順調に移動していたが、夕方、あと数時間でオリオンへ着くという時になり、道端で誰かが倒れているのを見つけた。
俺は『バグボート』から降りて、その人のそばへ近づいた。
「あの……だいじょう……」
その人の顔は青い斑点に覆われていて、既に息を引き取っているようだ。
他のメンバーも俺のそばへ来て、その人の様子に驚いて目を見張った。
「この人……『虫ぞり』に乗ってたのかな?」
確かに、そばにそりが落ちている。何か強い力がかかって、バラバラに壊れていた。
「虫たちは逃げた……?」
テンが、主に『虫ぞり』のことを気にしていた一方で、ソラは遺体の肌をよく観察していた。
「これ……たぶん、モンスターの毒……」
「この人、死んでからそんなに時間が経ってないわね」ソラの肩の上のリアも、遺体をじっと観察していた。
「もしかしたら、まだ近くにモンスターがいるのかも……」
ソラは俺に向かって言った。
「ここ、危ない……早く、逃げないと……」
――しかし、相手は非常に俊敏な生き物だった。俺たちは、既に狙われていた。
突然、テンが銃を撃った。ダンッと大きな音があたりに響く。
「……ダメだ。速すぎる!」
「『クリムゾンブレス』!」
レイの放った魔法も、軽くかわされてしまった。
動体視力がいい方だと自負している俺でさえ、何か黒い陰が目の端にちらちらと見える程度で、相手の姿をほとんど捉えることができない。
「動きを止める……」ソラは叫んだ。「『グラビティシャックルス』!」
一瞬、相手の動きが止まった。
――それは、ドラゴンだった。
全身を黒くて光を反射する鱗に覆われ、ところどころの鱗が青紫色だった。前脚も後ろ脚も太くて頑丈そうで、体との間に皮膜が付いていた。尾は細く長めで、先端に硬くて赤い部分があった。毒針だった。
ドラゴンは赤い目でこちらを睨みつけているが、ソラの魔法で動けないらしく、地面に潰れるように伏せっていた。
「『キングヴェノムドラゴン』……」ソラが目を見開いている。「世界で一番危険な毒を持つ……」
「これ!一発でも攻撃を食らったらダメなやつね!?」
『は、はい……』ピエール33世は白く光り、体を変形させ始めた。『とりあえず、ワタクシが大きな盾になるので、相手があきらめていなくなるまでそれで耐え抜きましょう……!』
現れた『盾』は、高さは3メートル、横幅は7メートルほどあり、『盾』というより、ほとんど『壁』だった。表面に複雑できれいな模様が描かれていたが、呑気に鑑賞している場合ではない。
「『クリムゾンピアシングブレス』!」
レイは魔法を放ったが、直前にソラの魔法の効果が切れ、ドラゴンは魔法を軽々とかわした。そのままレイに飛びかかり、レイは剣を盾にして、攻撃を耐え抜こうとした。
ドラゴンはレイの大剣に爪を引っ掛け、体を捻って尾の先の棘をレイに刺そうとした。
「レイさん!」
テンは叫び、再び銃弾を放った。弾はドラゴンの腹に命中し、驚いたドラゴンは、バランスを崩して下に落ちた。
ドラゴンはレイから離れ、こちらに顔を向けた。
「シュルルルル……」
どうやら、銃弾が皮膚に突き刺さっているらしい。痛そうにしていて、その後の攻撃が少しだけ遅くなった。
「えいっ」レイが、魔法でピエール壁を動かして、ドラゴンの攻撃を受け止めた。
しかしその時、腹から銃弾がポロッと取れた。ドラゴンは素早く跳んで、ピエールウォールの縁に前足を引っ掛けた。
「『パワーガード』!」ソラが叫んで魔法盾を発動させる。
けれども、ドラゴンがそのシールドに爪を引っ掛けた途端、シールドの色が紫色に変色し始めた。
「ソラ!」俺は咄嗟にソラの腕を掴み、その場から引き離した。
ソラのシールドが消えてなくなり、ちょうど先ほどソラがいたところへドラゴンの爪が落ちてきた。レイが大剣を投げ、ドラゴンと、俺とソラの間に突き刺した。
「サンキュー!」俺はレイに向かって言った。
振り下ろされたドラゴンの反対側の前足が剣に引っかかり、その隙に俺とソラはその場から離れることができた。




