250話 6月17日#01
夜の間は何事もなく、やがて日が昇って朝になった。
俺とリア、ソラの3人が1時間ほど仮眠をして起きた時、レイとテンが朝食を作って待っていた……テンが、いつも以上に上機嫌なのは気のせいか?
「スープにパンに、ベーコンエッグ……栄養バランスもバッチリ……」
「今はいいけど、これから暑くなると思うとしんどいわ〜」
リアは、昨日から文句ばかり言っている。
「朝食食べ終わったら、移動開始だな」
『今日も何事もなければいいんですけどね……』
――そうは問屋が卸さない。俺たちは、またトラブルに見舞われた。
「うあああ……飛ばされそう……!!」
「ソラちゃんの『魔法盾』と僕の強化魔法と、丈夫なテントがあって……これ!?」
「強すぎてシールドをすり抜ける風があるんだろう……おい!レイ、寝るな!」
「……眠い……」
――現在、俺たちは砂嵐のただ中にいた。それも、かなり大きな。
そこそこ離れたところで気づいたので、『バグボート』から降りて収納し、テントを張って、ソラがシールドを展開して、それをテンの『シールドを強化する魔法』で強化して……と、事前に備えられたのだが……
「リア!レイを起こしてくれ!」俺はテントを手と足で押さえながら叫んだ。
「そうね……アリエス!もうちょっと頑張るのよ!」
リアがレイの肩をぺちぺち叩いている。それが頬に移ってバシバシ叩かれ、レイはようやく目覚めたようだった。
「んー。頑張る」
レイはそう言って、俺とは反対側のテントの端を押さえた。
『みなさん、あとちょっとです!』月の神は、テントの中央を支える棒を掴んで、倒れないように必死に守っていた。『そろそろ通り過ぎていく頃だと思います!こういうのは、そんなに長くは続かないはず……!』
それから10分くらいたち、風が止んで静かになった。俺たちはテントの外に出て、状況を確認した。
「……もう大丈夫……?」
「……そうだな。向こうの方へ行ったみたいだ」
ソラと俺が、遠くを見つめていると、いつの間にかテンが自分の鏡を覗き込んでいた。
「いやあ、随分砂だらけになったねえ……せめて顔と髪についた砂だけ落としておくかー」
「……そういえば、」レイは不思議そうにテンの顔を見つめた。「何でテンって、『シールドを強化する魔法』が使えるんだ?」
「……え?」
「もしかして、テンも何かしらシールドとかバリアが使えるんじゃないか?」
「……え?」
テンが固まっている。
「確かに、テンなら持っていそうだな」俺はテントの砂を払いながら言った。「でも、ひと口に『シールド』といってもいろんなのがあるから、今回の砂嵐で役立つのかどうかはわかんねえけど」
「僕のはね……」テンはため息をついた。「すごーく特殊なやつだから、正直みんなの役には立たないな」
「そうなのか……?」
テンって、いろいろ秘密が多いな。
「……まあ、いいや」俺はソラに訊ねた。「あとどれくらいで目的地に着くか、わかるか?」
「さっきまでのペースだと……着くのは夜になると思う……」
ソラは、テンのジャイロコンパスと『移動距離測定器』と地図を見比べている。
「着くのは夜7時か8時……休憩時間を少しずつ減らせば、何とか7時頃に着くと思う……!」
「そうか……じゃあ……」俺はレイに言った。「少し休憩したら先へ進む。『バグボート』を用意してくれ」
「……ほーい」
今更ですが、『シールド』と『バリア』はちょっと違うものみたいです。
どちらも魔法で展開され、相手の攻撃を防ぐ働きがありますが、『シールド』は一時的に発動し、かなり強固なので、戦闘でよく使われます。
一方『バリア』は、長時間持続します。『シールド』より効果は弱めですが、その中にあるもの・いる人を全方位からしっかり守ってくれます。
ただ、一部の魔法はどちらの特性も持っているようです。習得難易度は高めですが、他の『シールド』や『バリア』よりはるかに強い防御力を誇ります。そういう魔法を、この旅の中で見られるのでしょうか……?




