249話 6月16日#04〜夜の見張り番〜
何かもう慣れたけど、最近ずっとテンと一緒にいる気がする。今回の夜の見張りでも、テンと2人だけでやることになった。
どういうわけかみんなそれで納得しているみたいだが……理由がわからないのは私だけか?
「あー。レイさん、」テンが話しかけてきた。「今日は読書しないの?」
私が明かりのない環境でも、ピアスの明かりで本を読んでいるのを、テンは知っていた。
「ちょっと気になって」
「……何が?」
「テンは、私たちに会う前、どんな仕事をしてたんだ?」
「えーっと……」
テンは少し考えてから、囁くような声で言った。
「実はあんまり大きな声では言えないんだけど……ちょっといろいろと『よくないもの』の取り引きの仲介を……」
「ん?『よくないもの』?」
「うん……あのさ、前に僕が「子どもが成長するのによくない環境で育った」みたいなこと言ったでしょ?その関係で、『そういうもの』を扱う仕事しかできなくてね……」
随分ぼかされているが、何かを伝えようとしているらしい。
「まあ僕自身が、それを使って何か悪いことやってたわけじゃないんだけど……顧客がちょっとね……」
――そういう人なのか。
「あー。じゃあ、出会った時に森にいたのは……」
「まあ……逃げてたわけです」
――『誰から?』は、訊かない方がいいんだろうな。
「でもまあ。くだらない仕事といえばそうだったから……レイさんたちと会って、流れで一緒にここまで来たけど、後悔することは何もないよ」
「……それはいいが、」私は首を傾げた。「突然辞めて、大丈夫だったのか?」
「それは……実は僕もわからないんだけど……」テンの顔が曇った。「しばらくは『偽名』使ってるから大丈夫だろうけど、いつかはバレるよね……」
――ありゃ。テンがため息をついた。
訊かない方がよかったのかな?
「……まあ。その時が来たら、私たちが燃やせばいいだけか」
私がそう言うと、私のピアスに照らされたテンの顔が苦笑いをしていた。
「……燃やせるの、君だけだよ?」
「じゃあ、焼き焦がせばいいか」
「……それも、君にしかできないんじゃないかなー……」
「……とにかく、テンの味方になる」
それを聞いたテンは、一瞬嬉しそうだったが、すぐ顔を暗くさせた。
「やっぱりそれは、君たちを危険に晒しちゃうし、全部僕の責任だし……」
私はふと思いついて、横にいるテンに寄りかかってみた。
「テンは悪い人じゃないから、何が起こっても大丈夫だ。これだけ仲間がいるんだし、みんな力を貸してくれる」
テンは驚いた顔をしてたけど、急にほっとしたような顔をした。
「そうだねー。君たち、絶対僕を放っておかないよねー」
「そういうことだ。だから、大丈夫!」
私がそう言うと、テンは私の肩に腕を回して、ぎゅっと抱き寄せた。
どうやら、少し安心させることに成功したようだ。
「やっぱり君のこと、頼りにしちゃうんだよねー。僕なんかよりずっと気丈だし」
――あれ?私だけか?
「リアちゃんに、君にだけは隠し事なしにしろって言われたけど……確かにそうかもね。他の仲間たちを頼りにしてないわけじゃないけど、やっぱり君が味方だっていうのが、一番安心する」
――やっぱり、私だけなんだ。
「だから、君には僕のそばにずっといてほしい……」
うーん。なぜかいつもテンがドキドキしてるみたいだけど、何となくわかる気がしてきた。
――なぜか、私もドキドキする。
「……にしても、レイさんって本当に体温高いんだね。こうしていると、あったかい……」
「そうか?」
「うん……体温、何度くらいあるの?」
「だいたい42度」
「……それ、普通の人なら病気でぶっ倒れて死にそうなときの体温だよ……」
とても穏やかで、いい感じの時間が流れていますね。私もレイと一緒にドキドキしちゃってます。
余談ですが、氷の魔法を得意とするスカーレットは、体温がだいたい32度くらいだそうです。仕事で人と握手する時は、『冷え症』だと説明しているみたいです。




