246話 6月16日#01
翌日。
俺たちは朝飯を食って少し食料品を買い足した後、すぐに『バグボート』に乗って次の街へと向かった。
「……やー!これ気持ちいいねー!」テンも、だいぶ『バグボート』に慣れてきたようだ。
「……日中は頭上に注意……『ルフ』って大きな鳥がいる……」
『他にもいろんなモンスターが住んでいますからね、気を抜けません!』
そうやって俺たちが飛んでいると、時々ラクダを連れたり『虫ぞり』に乗ったりしている行商人たちの姿を見かけた。
ラクダより『虫ぞり』の方が速く移動できるが、陶器やガラス製品、貴重品などはラクダで運んだほうが壊れるリスクが少ない。あと、めっちゃ重いものもラクダで運ぶらしい。
――というのは、『砂漠の歩き方』に書いてあった豆知識だ。
「そろそろ12時になるよ!」と、テンが言った。「長く飛んでるから、しばらく休もう!」
「了解!」俺はあたりを見渡した。「あの岩場あたりで休むか!」
この砂漠は、思ったより岩場が多い。ディアナよりもっと東の方へ行くと完全に砂だけの風景になるらしいが、そこへ行く予定はなかった。ちょっと残念。
俺たちは、岩場にテントを張って、その中で休憩した――このテント、横の布をまくって日よけとしても使えるんだな。
「やっぱり、さすがに暑い……」リアが俺の膝の上で横になった。
「とりあえず、水を飲め」俺はそう言って、リア用の小さな水筒をつまんでリアの前にぶら下げた。
「やー!『自動水生成機』って、便利だねー!」テンは上機嫌に言った。「奮発して買ってよかったね!」
「いつでもどこでも美味しい水を作って溜められる……いい魔巧機械……」ソラも、嬉しそうに水を飲んでいた。
「……まあ俺たちは、飲み水以外はテンの魔法でまかなえるし、水で困ることはなさそうだな」
「テントもいいやつ買ったよな。読書が捗る」
暑さ耐性ナンバーワンのレイは、機嫌よく読書を楽しんでいた。
「その暑さ耐性、あたしも欲しいわ〜〜」リアはそう言って、ため息をついた。
「確か『修行』で、耐性がつくまで火に投げ込まれたんだっけ?」と、テンは言った。
「ああ、そうだ……当時は体中、火傷の痕だらけだったらしい」
「……それはヤダ」リアはレイを見上げた。「……てか、その痕残らなかったの?」
「んー。まあそれも込みで慣れさせるものだからな」
「……何それ」
「リアはそこまで過激なことはされてなかったのか?」と、俺は訊ねた。
「そうね。強いて言うなら、100メートル先の的に矢を当てるまで食事抜きって訓練をしてただけで」
――ちゃんとされてるじゃん。
「……ソラは?」
「小さい頃から、毎日12時間体術の特訓してただけ……」
――星霊使いは、修行すら常軌を逸しているようだ。
『みなさん苦労して強くなったんですねー』
「モノは言いようだな」
すると、ピエール33世の声のした方から、いい匂いがしてきた。そちらを振り返ると、ピエール33世が皿を俺に差し出してきた。
『お昼ごはんです。みなさんで食べられるよう、ピザを2枚ほど焼いてみました』
「……いつの間に……」
「でも、美味そうだな!」
「……じゃあ、食べますか!」
「いただきまーす!!」
『どうぞ召し上がれ!』
そういえば、以前「神が人間のために食事を作るのはどうなんだろう……」と思ったことがあるが、最近はほぼ当たり前の状況になっている気がする。
時々、ピエールキッチンの指導のもと自分たちで料理することもあるが……
『今夜はクスクス食べたいですね!トマトソースで味付けしましょうか……ハリッサをちょっと使って辛めの味付けにしてもいいですね……』
自分では食べないのに、料理を作る月の神はとても楽しそうだ。
「……まあ、楽しんでやってるみたいだし、いいのかな」
俺はそうつぶやいて、くすっと笑った。




