244話 6月15日#05
その後、ルーさんに別れを告げた俺たちは、早速ウルカヌスへ『バグボート』に乗って出発した。
『バグボート』には、小さな計器類がいくつか付いていた。速度と高度を表す目盛りと、あと小さな『ジャイロコンパス』もある。
魔力を注ぐだけで、方角と機体の傾き、あと目的地の方向までわかる、テンが所持しているものと同じ機能を持つものだった。
あともう1つ、金属の管のようなものも付いていた。ルーさんによると、機体の中にいる人の声が大きく聞こえる『拡声器』だそうだ。
その『拡声器』から、早速レイが楽しそうに話す声が聞こえてきた。
「これ、なかなか気持ちいいな!」
「気温が高いし、熱い風が吹いてるから、あんまり乗り心地よくないのかと思ってたんだけど……」
「意外と快適……楽しい……!」
みんな、気に入ったようだ。
『乾燥した砂漠でないと使えないなんて、ちょっと悲しいですねー……』
現在、月の神はレイの首元のネックレスに変身していた。これなら、機体から振り落とされる心配はない。
「よしっ!このまま真っすぐウルカヌスへ行くぞ!……レイは、誰かの後ろを追いかけるんだぞ?」
俺がそう言うと、再びピエールネックレスの声が聞こえてきた。
『ワタクシにお任せください!レイさんが道を逸れた時は、ワタクシがレイさんに正しい方向を教えますからっ!心配ご無用!』
「ちょっと不安だな……」と思いつつ、俺たちはウルカヌスに向かって、岩と砂ばかりの砂漠の中を真っすぐ飛び続けた。
ウルカヌスの街へ着いたのは、日が傾きかけた夕方5時くらいのことだった。
『バグボート』は、街へ着いたら都度整備場へ返すことになっていた。
俺たちは『バグボート』を返却すると、まずは『シャワースタンド』を探して街を散策することになった。
「砂漠の街では、錬金術で作られた粒子を流す特殊なシャワーが使われてて……その中で服や体に付いた砂を落とすらしい……」
『砂漠の歩き方』の本も、すっかりソラの持ち物になっていた。
「あ、あそこにある」
そこには、先ほどソラが言っていた粒子が出る『シャワールーム』を有料で使える施設があり、俺たちはそこで砂をきれいに洗い流した。
砂漠は、水が貴重な地域だ。だから、水の代わりになるものが流れるシャワーを開発したい――と、ディアナに住む錬金術師が考え、開発されたものらしい。その人の名前は忘れたけど。
「結構きれいに取れたな」俺は自分のコートを眺めながら言った。
「そうだね」テンは、いつものように鏡を見て、自分の身なりを気にしている。「レイさん。僕の後ろ髪に、砂付いてない?」
「……虫が付いてる」
「え!?それ、ホントなの!?冗談なの!?」
「冗談だよ。気にするな」
俺はそう言いながら、テンを追い越してみんなの方を向いた。
「それじゃ、これから飯食うか!」
「……あのあたりに、飲食店街がある……」
ソラが、今度はガイドブックを見ている。
「じゃあ、早速行きましょ♪」俺の肩の上にいるリアがそう言った。「これからどうしていくか、少し考えないといけないんでしょ?」
「そうだよねー」テンはどこからか帽子を取り出して、その中に鏡を仕舞った。「『バグボート』があってもディアナまでは結構距離があるから、着くまでに数日はかかるよねー」
「日数的に結構厳しいな」レイは顎に手を当てて考えた。「必要な『石』は残り5個だろ?しかもどこにあるか見当もつかないやつもあるし」
『これは、ワタクシの『幸運力』が試される時ですねっ!』
「『運』に頼るのも、どうなのかな……」
ピエールネックレスの言葉に苦笑いしていると、飲食店街へたどり着いた。
――さて。今回は一体何を食べようか……




