240話 6月15日#01
翌朝。
同じ食堂で朝食をとった後、俺たちは観光ガイドに連れられて、集落の中を歩くことになった。
その観光ガイドであるボリスさんは、俺たちが『バグボート』で砂漠を旅行しようとしていることを話したら、ニコニコしながら頷いた。
「ですよねー!ああいう乗り物、他にございませんからねー!」
「うーん……」テンは悩ましげに言った。「どうしてあんな乗り物ができたんですか?」
「実は、昔の砂漠の民は『グライダービートル』に直接乗っていたそうで……」
「え?」テンの顔が固まった。
「……ただ、それだと相当練習を積まないと乗れなかったので、『バグボート』を開発した方がいまして……『ディアナ』に住んでいた夫婦で、『ロジャー』さんと『ミレーユ』さんという方です」
2人は『シンプル・イズ・ベスト』の精神で、魔力を供給するだけで空に浮かぶことのできる初号機を、たった1年ちょっとで開発したそうな。
「魔法石をつけるとどうしても重くなってしまいますので、乗り手の魔力で動かす仕組みにしたそうです」
――その時、ある建物にたどり着いた。他とは違い、大きな鉄の扉がついている。
「『ロボットの動力源』でしたね」ボリスさんは、ゆっくりと扉を開いた。「実はこういうのがありまして……」
その建物は、直径10メートル以上の円筒の形をしていたが、天井がなく、代わりにガラス製の大きな覆いがついていた。まるで漏斗のような、不思議な形をしている。
その一番細いところに、大きな歯車の付いた箱型の機械が設置されていた。歯車はぐるぐるとゆっくり回転しており、それと連動するように機械の中の何かがカタカタ動く音がした。
一方足元を見ると、床も地面も見当たらなかった。ただ、大きい穴が開いているだけで、どこまで深い穴なのか見当もつかなかった。
「これは……?」
「……あ。そこから先はバリアがあって、普通は入れません」
――確かに、前へ進むとバチッと何かに弾かれる感覚がして、それ以上先へは進めなかった。
俺たちはしばらく黙って装置の様子を眺めていたが、突然テンがパチンと指を鳴らした。
「今気がついたけど、これ『砂時計』じゃない?」
「……え?」俺はテンの方を向いた。
「ほら、漏斗に砂が溜まっていて、それが地面の方へ流れていって……」
――あー。言われてみれば、そんな気がしなくもない。
「……けど、これはどう考えても『時間を測る』ものじゃないよな?」
俺がそう言うと、ソラがこくんと頷いた。
「砂が一方的に下へ流れている……砂時計なら、どこかで砂の流れが止まらないと測れない……」
「ねえねえ。これ『魔力供給の動力源』なんだから、」レイは、少し得意そうな顔をした。「……砂が下へ落ちる力を利用して、魔力を発生させてるんじゃないか?」
「なるほど」ボリスさんは笑っていた。「みなさんで意見を出しあって答えを導く……なかなかのチームワークですね」
「……ということは?」
「ええ。レイさん、正解です」
「やったー」レイは、なぜか差し出されたテンの手のひらに、ほとんど反射的にハイタッチしていた。
「レイさん、すごい!」そしてテンは、自分のことのようにめっちゃニヤニヤしていた。
そんなことをしている間にも、歯車はガタンゴトンと音を立てて回り続けていた。
「……でも、何でこんなに砂が溜まるんだろう?」
俺が首を傾げると、ボリスさんが口を開いた。
「あれは、普通の砂ではなく、『星の砂』なんですよ」
『「「「「「え?」」」」」』




