237話 6月14日#05
「あの……」俺は、女性に恐る恐る声をかけた。「ここは、一体どんな場所ですか……?」
女性は視線をこちらに向け、柔らかく微笑んだ。
「いらっしゃいましたね?」女性は、向かいにある椅子を指した。「こちらに座ってください」
言われるがままに椅子に座ると、女性は1枚だけ残し、残りの紙は全て封筒に入れて、自分の横に置いてあったバッグの中へ仕舞った。
代わりに、透明な球体を取り出した。中に線や点があって、水晶球よりジャイロコンパスを彷彿とさせた。
「かねてより、あなた方の訪問を予測しておりました……私の名前はエステル。そしてここは、私の占いの館です」
――うーん……
『検査』とか言うから、てっきり何か検問のようなものをされるのかと思ったら、なぜか占い師の前へ通された……らしい。
俺が戸惑っていると、エステルさんはさらに説明を付け加えた。
「私があなた方の過去、現在、未来を占いで見るので、あなた方が我々に敵対するかどうか、判断させてください」
「は、はあ……」
『占いが盛ん』とは聞いていたが、そんなことを占いで決めて大丈夫なのだろうか?
「これから数日間の星の配置からは、この村はしばらく安全であることが読み取れます」
俺はしばらく目の前の球体を見て、突然あることに気がついた。
「あ、この記号……てんびん座の……」
球体の中には、いくつかのシンボルが、バラバラの位置に浮かんでいた。そしてその一番外側に、てんびん座を含む十二星座のシンボルが浮かんでいた。
「これは、『ホロスコープ』です」
「ほ、ほろ……?」
「占星術で使う、惑星の配置を見る道具です」
エステルさんはそう言うと、ホロスコープの見方を簡単に説明してくれた。
――が、よくわからん。
途中で俺の誕生日を訊かれたが、その時の惑星の配置から、俺がどういう人で、どんなことを大切にしていて、今どんな状況なのかを、現在の惑星の位置と比較することで正確に占える。らしい。
「あなたは、人とのふれあいを大切にします。今は仲間、友人に恵まれ、充実した毎日を過ごされています」
「あー。まあ、そうですね」
何となく、そのくらいは占わなくても、見てすぐわかる気がする。
「あなたは多くの強みを持っています……ですが、それが裏目に出る可能性があります。例えば、あなたは過去のことを振り返り、現在の自分の評価を下げる傾向にあります」
――魔法への苦手意識のことを言っているのか……?
「あなたは素晴らしい人です。あなたには、目の前の困難に立ち向かう力を既に持っています。それを忘れないで……」
「あの……それで、」俺は恐る恐る訊ねた。「俺の『検査』の結果を知りたいんですけど」
「そうですね」エステルさんは微笑んだ。「あなたの人となりは理解いたしました。きっとここでの滞在の中で、何か得られるものがあるでしょう。お時間の許す限り、この村を散策してみてはいかがでしょうか?」
――たぶん、許可が下りた。たぶん。
「では、外に出て、次の方を呼んでくださいね」
「は、はい……」
何だか占い師らしい人ではあるが、何に関して話をしているのか、正直よくわからなかった。
――占いって、こんなものなのだろうか……?




