235話 6月14日#03
話を聞くと、この『虫ぞり』は空を飛んで移動する乗り物らしい。飛行高度は飛空艇より少し低い。揺れが少ないので、そこそこ快適な乗り心地だと言っていた。
あと、『グライダービートル』は主に夕方や早朝が活動時間帯なので、今の時間帯に移動することが多いらしい。
「荷物多いから手狭で悪いっすけど、すぐ着くんで、ちょっと我慢してくださいっす」
「ちなみに、いつ頃着きますか?」
「……1時間もあれば着くっす」
「早っ!」
――人間の足では、1日かかるのに……
「……あ、あと結構羽音うるさいんで、そこは覚悟してほしいっす」
「了解です」
全員が踏み台らしき物に座ると、ティナさんは御者台へ向かった。
「……やっぱり『月の神様』のご利益すごいわね」と、リアは言った。「毎回、ミラクルな出会いが舞い込んできてない?」
「これで、旅程が1日短縮できたな!」
レイは、ランプでそこそこ明るくなった『虫ぞり』の中で、快適に読書ができることを喜んでいた。
――一方、
「た、確かに楽に移動できるのはよかったけど……何でムシなの……『ペガスス』とか『ドラゴン』とか、他にもいっぱい空を飛ぶモンスターがいるのに……」
――テンは、まだ文句を言っていた。
「そこは……慣れ……」
「ソラちゃん、手厳しいね……あうっ!」
『虫ぞり』が動き出し、座高の高いテンは、他のメンバーの頭上にある木枠に頭をぶつけた。
俺は、ちらりと御者台の方にある窓を見てみた。星空が見え、『虫ぞり』が空に向かって引っ張られているらしいことがわかる。
『これはまた、新感覚の乗り物ですねー』ピエール33世は、楽しそうに黄色く光った。
「飛空艇……船……列車……『虫ぞり』……あと『バグボート』?」俺はくすくす笑った。「ピエール33世について行ってるだけで、こんなにいろんな乗り物に乗れるなんてな!」
「やっぱり、『冒険』って楽しいわね!実家に籠もっているのと大違い!」
テンの膝の上に乗っているリアは、ごきげんな様子だった。
「『バグボート』……楽しみ……」ソラも、目を輝かせていた。「ゴーグルつけて、風に乗って……かっこよさそう……」
「……も、もういいや!」
テンは、突然自分の膝を叩いた。勢いで、リアが床に転げ落ちた。
「これ以上、みんなにかっこ悪いところを見せられない!これからは、僕も虫嫌いを克服して……あうっ!」
――また、そりの木枠に頭をぶつけていた。
「……頼りがいのない『野菜男』ね……」
リアは、俺の膝の上に這い上がると、呆れて肩をすくめた。




