234話 6月14日#02
『虫ぞり』の御者台から、誰かが降りてきた。
「……あー、やっぱこのあたりの人じゃなさそうだ」
その人は、開口一番、そうつぶやいた。
それからゴーグルを外し、俺たちが顔を見られるように、被っていたフードも外した。
「どーもー。もしかして、道に迷ってたりします?」
その人は、短い茶髪で赤い目を持っていて、ランプに照らされたつややかな褐色の肌に、緑色の複雑なタトゥーを身に着けていた。性別は、今の状態だとわかりにくいが、声の高さからすると女性だと思う。
「あー、こんばんは」俺は一歩近づいた。「俺たち、さっきこのあたりに来たばかりなんです。ここにいるメンバーで旅をしていて……」
そうやって近づいた瞬間、気づいた――この人、背がデカい。俺より。
「なるほど、旅人さんっすか」彼女の方も、俺に一歩近づいた。「あたしはティナ。行商人やってるっす」
「俺の名前はカイトです」
俺とティナさんは握手をした。
「さっき遠くから光が見えたんで、『救難信号』かと思ったっすけど……」
ティナさんは、レイを見つめた。
「……変わったピアスつけてるっすね」
――どうやら、レイのランプ型ピアスの光を、花火の光と間違えたらしい。
「……あ。でも、もしよければ、このあたりについて情報をいただけるとありがたいです」
「目的地は?」
「『ユスティティア集落』……」と、ソラが答えた。「そこで『バグボート』を借りて、砂漠を移動したい……」
「……なるほど」ティナさんはニコッと笑った。「ちょうどあたしの目的地もそこっす。ついでに集落へ届けてもいいっすよ!」
ティナさんはそう言って、後ろの『虫ぞり』を親指で指した。
「……どうする、みんな?」
俺は、仲間たちに訊ねた。
「ちょうどいい……けど、」ソラはテンを見た。「テンが乗れればの話……」
「あ、あの……」テンが、恐る恐るティナさんに話しかけた。「そ、その……ムシ、何ですか……?」
「『グライダービートル』っす」ティナさんはテンと正反対に、涼しい顔をしていた。「さっき言ってた『バグボート』の材料になる虫っすね」
「そうか。その虫が『バグボート』の……『材料』……?」
――どうりであの乗り物、見た目が虫っぽいわけだ。
「……『バグボート』に乗るなら、こいつらに慣れないとな、テン!」
俺が、そう言ってテンの背中を叩くと、テンはまた「ううう……」と身を引いた。
「私は、歩くのより『お届け』してもらう方がいい!」レイもテンの背中を叩いた。「よし!行くぞ、『ユスティティア』へ!」
「うう……レイさんが、そう言うなら……」
――やっぱ、レイの方がテンには効くのか。
「……あ。あたしはおっけーよ♪」
『ワタクシもです!』
――こうして、みんなの意見はまとまった。
「じゃあティナさん。お言葉に甘えて、乗せてもらってもいいですか?」
「了解!」ティナさんは、くすくす笑っていた。「……てかあんたたち、おもろい組み合わせっすね!」
「……否定できない……」




