227話 6月12日#04
その後。
俺たちは、城の近くまでやって来た。ここから先は、警察が見張っていて、容易には近づけなかった。
マユさんの話によると、金庫は割と小さく、軽くずしっとくるくらいの重さだと聞いたらしい。隠し場所も、大体見当がつくとか。
そのマユさんが部屋へ入り、金庫を探してもらうことになった。そしてテンが、それに付き添うことになった。
「あの。実は私、婚約者からもらった指輪を失くしちゃって……」
マユさんに考えがあるのか、そんなことを言い始めた。
どうやら失くした際、特定の人は失くした場所がわかるが、それ以外の人には透明で見えなくなる貴金属があり|(錬金術で作れるらしい)、その金属でできた指輪を探していると話した。たぶん、防犯用に考え出された金属なんだろう。
「……で?そちらの方は?」
「私の『フィアンセ』です」
――テンが、衝撃のあまり凍結した。
「彼にしか失くした場所がわかりません。なので一緒に探させてください!」
――たぶん、マユさんは必死に考えて、そんな嘘を言ったんだと思うが……
警官は同僚たちと話をしてから、マユさんとテンを中へ通した。
――そしてしばらくして、2人は帰ってきた。
金庫は、付き添った警官が持っていた。
2人は少し警官と話をした後、こちらに近づいてきた。そのマユさんの左の薬指には、指輪が……
その後、元いた公園で、マユさんが何をしたのか話をしてくれた。
「部屋に入って、聞いていた場所をしばらく探していたら、金庫が見つかりました。それで私が扉を開けようとしたんですが、開かなくて……」
――ところが、テンが扉に触ると、簡単に扉が開いたらしい。
「それで、お話の『石』は見つかりました。今、テンさんが持ってます」
「そうか」俺はテンに呼びかけた。「テン!ちょっと『石』を見せて……」
――テンは、地面にうずくまり泣いていた。
「……あー……」俺は苦笑いをした。
その時、マユさんがはっとして、こちらも泣き始めた。
「も、申しわけありませんっ!心に決めてた女性がいらっしゃったんですね……私、もっとましな嘘を考えればよかった……!」
「……あー……」
――困った。
「……あの……」ソラが恐る恐る声をかけた。「もしよければ……その指輪の話を……」
「……あ。これは右手の薬指に着けていた指輪を、左手に着け替えただけです。そこだけは機転を利かせました……でも……」
マユさんの目から、涙がポロポロ流れている。
「ホントに私、迂闊でした……!」
「えっと……あの……」俺とソラは、互いに顔を見合わせていた。
一方、
「……ねえ、あんた」ずっと隠れていたリアが、こそっとレイに耳打ちした。「テンが『フィアンセ』だとか言われてるわよ。何とも思わないの?」
「別に」レイは本から目を離さなかった。
「……本当に『フィアンセ』の意味わかってる?」
「菓子」
「それは『フィナンシェ』……!」
――1人だけ、リラックスして趣味の読書を楽しんでいる奴がいた。




