221話 6月10日#05
そういうわけで、俺はテンと戦うことになった。
テンは狙撃系の攻撃に優れているが、俺はあえて剣を使って間合いを詰める練習をすることになった。
『それではいきますよ~!』事情を聞いたピエール33世が、審判を務めることになった。『よーい……始め!』
――と、その瞬間、テンの銃弾が俺の胸めがけて飛んできた。俺は剣を抜く動作中だったが、剣の魔法が発動して銃弾は魔法に飲み込まれた。
「あ、そうか」テンは面白そうに目を細めた。「剣は左側に提げているから、抜刀時は弾が心臓に当たりにくいんだね」
それから俺は間合いを詰めようとしたが、テンは魔法の呪文を唱えながら銃を撃つという離れ技をやってのけ、なかなか近寄らせてもらえない。
しかもテンは、再装填時間が極端に短い。一瞬隙ができるが、間合いを詰められるほどの余裕はない。
そうこうするうちに、銃弾が右腕に飛んできた。そこそこ柔らかいゴムでできていたが、それでもじわっと痛みを感じた。
そのすぐ後に来た水弾を何とか避けながら、考えた。
――うーん。どうしたらいいんだろう?
結局近づく隙を見つけられないまま、テンの水の魔法にやられて、俺は膝をついてしまった。
『お疲れ様でーす』
ピエール33世が、どこからかお茶を出して、俺とテンに渡した。
「いやあ。負けちゃったねー」
テンは、いつものニコニコ笑顔で言った。
「……つーか、やっぱテン強い」
俺ははあとため息をついた。テンが涼しい顔をしている理由は知っていた。
『テンさん、ほとんど動いていませんでしたね』
「逆に俺は、走ってばっかだった……」
「うーん」テンは顎に手を当てて考え込んだ。「普通の『銃使い』なら、剣の魔法で耐えればいいだけだけど、僕みたいに魔法も組み合わせる相手だと、なかなかそうはいかないよね」
『そういえば気になっていたんですが、』ピエール33世は俺に訊ねた。『闘技大会では、死ぬ人はほとんどいませんよね?どうやってるんですか?』
「『ネクタル』とかいう飲み物飲むと、一時的に死ななくなる――効果は1時間ぐらいだな」
「え?」テンは振り返った。「じゃあ、銃は実弾使うの?」
「もちろん」
「い、いや『もちろん』って……」
2人とも、意外と知らなかったんだな。
「……ということは、実際の試合では、みんな本当に本気で戦うんだ」
「そういう見せ物だからな」
「……じゃ!今度からはバンバン心臓を狙うよ!」テンはにこーっと満面の笑みを浮かべた。「何回か試してみて、改善点を洗い出していこう!」
「何だ、その笑顔は……」
俺は、苦笑いした。
――『持つべきものは友』だな。ホント。




