214話 6月9日#01
「……『太陽の神殿』?」
翌朝、朝食を食べている時、ソラが気になることを言った。
「うん……カサンドラ山の中腹にある……太陽の神を祀る神殿……」
「へえ。そんなのがあるんだ」テンは、コーヒーを飲んでいた。
『ええ。ありますよ』ピエール33世は、今は青く光っている。『ちなみに、ワタクシを祀る『月の神殿』ってのもあります。場所は違いますけど』
「……で、そこはどんな場所なんだ?」と、俺は訊ねた。「ただ建物があるだけ?それとも……」
『あー。仕掛けはいちおうあります。太陽の神が力を失った時、『石』を集めて仕掛けを発動すると、神の力が戻るんです』
「……それだけなの?」
『ええ、そうですね』ピエール33世は、リアにカメラを向けた。『現在太陽の神は力を失っておりませんので、観光しに行っても大丈夫です。何も起こらないはずです』
「行ってみる?」
「……完全に、ただの観光だね」テンはくすっと笑った。
「だが、私も興味あるな」と、レイは言った。「何か妙な空間に浮かんでるとか何とかで、入り口の割にはデカい建物らしいぞ」
『あらら。よく知ってますねー』
「昔、アリエスがそう教えてくれた」
「……じゃあ、行ってみるか」俺はソラの方を向いた。「そこまで行くのに、どれくらい時間がかかるんだ?」
「あたしの足なら、半日強……今から行っても、夜には帰って来れる……」
「……じゃあ、ちょっとした遠足気分で行けるわね♡」リアが自分の膝をぺちぺち叩いた。「行きましょ、行きましょ♪」
そんなわけで俺たちはアポロを出発し、ソラのゴーレムに乗って、国内最高峰の『カサンドラ山』中腹へとやって来た。
「『入り口の割には大きい建物』……」テンはレイを見た。「確かにそうなんだろうけど……」
「入り口、小さすぎねえか?」
俺たちが見ていたのは、高さ1メートルほどの石の祠だった。地味だし、何より『入り口』らしき空間が、人の手が入るくらいの大きさしかない。
『あー。えっとですね……』ピエール33世は緑色に光った。『これ、『鍵』の持ち主がいないと入れないやつですね』
「「「「え?」」」」
『……あ!心配いらないです〜!』ピエール33世は慌てて付け加えた。『もうこの中にいるんで!』
「……誰よ?」
『ソラさんです!』
すると、全員の視線がソラへ注がれた。
『あのー、難しいこと言うんですが、』ピエール33世は考えながら話しているのか、緑の光を点滅させていた。『『太陽の神殿』の入り口は、『守護星』が『太陽』の人だけが開くことができます』
『つまり、しし座……あたし……!』
ソラはそう言うと、祠に近づいた。
「……『守護星』って?」
テンが訊くと、ピエール33世はこう答えた。
『えーっと、占星術の考えなんですが……特定の『惑星』と、特定の『星座』が互いにリンクしてるんですよ。その性質、傾向が、お互いの位置関係によって強めあったり、弱めあったり……』
「……ま、つまり十二星座には、それぞれトレードマークになる『惑星』があるってことだ!」
レイの説明は雑だが、つまりは、12個の星座と10個の星――太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星――は、互いに影響し合う関係にあるようだ。
「私の『おひつじ座』は火星!」
「あたしの『いて座』は木星♪」
「……で、『しし座』は太陽が守護星……」
「……街の名前と一致するね」
テンの言葉に、俺は首を傾げた。
「レイさんは、マルス村出身で、守護星が『火星』。リアちゃんは、王都ユピテルの出身で、守護星が『木星』」
『……あ、わかっちゃいました?』ピエール33世はピンク色になった。『テンさんのおっしゃるとおり。星霊使いの故郷はみんな、この国で最も古い街で、名前が守護星からとられています』
「えっ!そうだったんだ!」俺はびっくりして目を見開いた。
『ええ!昔この『イェリナ国』は、占星術大国だったんです!今じゃ、廃れちゃいましたけどね』
「……あ、みんな……」ソラがこちらを向いた。「入り口、開いた……」
祠があった場所に、確かに大人が入れるほどの大きさの、入り口らしき空間があった。その奥から、明るくまぶしい金色の光が差し込んでいる。
俺たちは恐る恐る、中へと踏み出していった。
星座と守護星
おひつじ座→火星
おうし座→金星
ふたご座→水星
かに座→月
しし座→太陽
おとめ座→水星
てんびん座→金星
さそり座→冥王星
いて座→木星
やぎ座→土星
みずがめ座→天王星
うお座→海王星




