212話 6月7日〜元の姿へ〜
〜193話の前後の会話〜
俺たちは、たまたま見つけた岩の隙間に身を隠し、少し休むことにした。
『ほ、本当に申し訳ないです!ワタクシ神様なのに全然あなたたちを守れなくて……!』
「気にするな」俺はテンに訊ねた。「……レイ渡そうか?」
「……少し、待ってて」テンは帽子の中をごそごそ探った。「シャツだけ着替える」
そういえば、テンのシャツにべっとりと血がついている。相当血を吐いたんだろうな。
「……や、やだ♪ここで脱いじゃうの〜?」
リアが、なぜか恥ずかしがっている。
「君……男でしょ?」
「え?そう思う理由は?」
「あの粉の薬、吸っても平気だったじゃん」
「……もうコイツにも効かないか」
無駄な話ができるということは、テンにも少し余裕が出来てきたのかもな。
――それにしても、初めて見るが、
「テンって傷だらけなんだな」
「えっと……」テンは曖昧に笑っている。
テンの体には、あちこち古傷がある。刺し傷に切り傷、あと銃痕らしきものもある。
「……見なかったことにしてくれると嬉しいな……」
「……わかった」
テンが着替え終わると、俺はテンにレイを渡した。
テンは悲しそうな顔で、レイをぎゅっと抱きしめた。
『あの、テンさん』ピエールネックレスはテンに話しかけた。『あまり自分を責めないでください……ワタクシが悪いんです』
そして、ピエールネックレスは大声を上げた。
『み、みなさん!本っ当に申しわけありませーん!!わ、ワタクシ!こんなことくらいしかできなくて……!!』
「いや。咄嗟のいい判断だったと思ってるよ」テンは、自分も余裕がないのに、ピエールネックレスを慰めた。
『でもっ、ワタクシ神なのに、レイさんの『石化』の進行を遅らせることしかできなくて……!』
俺は、岩場の周囲を見渡した。誰も人が来る気配はないが……
「悪いが、そろそろ声のトーンを小さくしてくれねえか。今の俺たちは、誰に見つかっても面倒だ」
――その後もいろいろ話していたが、ふと気づくと、テンが血のついたシャツに何か粉を振りかけていた。白っぽい。
「……それは?」
「ん?洗剤」テンはそう言うと、魔法で水をかけ、シャツをきれいに洗い流していた。
「……さすがに全部落とすのは難しいよね」結果を見ながらテンは言った。「ちょっと古くなってたし、新しいの買おうかな」
テンは、また帽子の中をガサゴソやった。
取り出したのは、鏡。自分の頭の様子を、さまざまな角度からチェックしている。
「髪の毛も汚れちゃってる……僕の髪白いから、汚れが目立つんだよねー……」
「あ。いいのあげる♪」
服を探しているはずのリアは、突然ヘアブラシをとり出した。
「『髪の汚れをきれいに取ってくれる』ヘアブラシ!」
テンはそれを受け取り、サイズを大きくしてもらった後、自分の髪を梳かし始めた。
「おお!僕が元のイケメンに……!」
――汚れがとれて、喜んでいた。
「……よかったな」
テンに少し元の明るさが戻ったようなので、俺はホッとした。
「……じゃあ、テン。レイに服を着せてやりな」
「うん」
テンは、またレイの体をぎゅっと抱きしめると、リアから受け取った服をレイに着せ始めた。




