211話 6月6日〜アリエスを守れ!〜
〜191話、192話のリアの回想〜
「君さあ……いい加減にしろよ!」
テンはそう言って、スコルピウスの頬にストレートパンチを食らわせたの。
――あら〜、なかなか男前じゃない〜♡気になる子を傷つけられて、怒ってるのね。かっこいい〜♡
まあね、女の子を怖がらせて城に監禁して、気に入らなかったら『処刑』とかする最低最悪男だもの。どんどん殴ってやっつけちゃえ、テン!
一方カイトは、眉間にしわを寄せていた。テンほどじゃないかもだけど、カイトも怒ってる。あたしももちろん、怒ってるわ!
あたしはアリエスを見つめた。お風呂場でも凍ってる氷ってのも手ごわそうだけど、一番はやっぱり『石化』よねえ。一体どうしたら助け……ん?
「ね、ねえ、見て!」あたしは、夢中でカイトの肩を叩いた。「首元、見て!」
カイトは振り返り、あたしが見つけたものを見た。
「もしかして、ピエールネックレス!?」
「やっぱり、そうよね!アリエスのこと、守ってくれてるのよ!」
よかった♪月の神様、ずっといなかったからどうしてるのかなーって思ってたら、こんなところで頑張ってたのね♪
「そうか!」
カイトは少しほっとしたのか、テンに向けて声をかけようとしたんだけど……
「顔は僕の商売道具なのに、何傷つけてんだよ!」
復活したスコルピウスが、そう言ってテンを殴った。そしたら――テンがしゃがんで丸くなっちゃったの……
「もしかして……あばら骨が折れた?」
あたしは恐ろしくて、震えていたわ。
「血を吐いてるから、肺が傷ついたのかもな……」
たぶんその瞬間、カイトは次に何するか、決めたんだと思う。
カイトは、スコルピウスをお風呂に蹴り落とし、あたしをテンの肩に乗せると、的確な指示をくれた――ん〜♪頼りになる〜♪
「テン。もし『石』の力で傷が治って、動けるようになったら、レイの氷を融かしてくれ……無理はするなよ」
「ゲホッ……わかった……グッ!」
「リアは、毛布を出してくれ。レイを包んで運ぶ」
「……カイトは?」
「時間を稼ぐ。準備が出来次第、この城から脱出する」
「……わかったわ!」
――さて、問題に戻らなきゃ。氷って、雷通るのかしら?あれ?もしかしてアリエスが感電しちゃう?
テンは、しばらく苦しそうに息をして、血を吐いてたんだけど、吐血が止まるとすぐに立とうとした。
「さ、さすがに無理だと思うわ」
あたしはやんわり止めた。
たぶん、テンもわかっていたと思う。テンは少し歩くと、床にべしゃって座っちゃった。
だけど、「痛い!」とかひと言も言わずに、呪文を唱えたの。そしたら、
――ゴウウウッ!!
大きな炎が、アリエスを包みこんだ。
「レイさん……大丈夫……僕が助けるから……」
――もーっ!いちいち泣かせないでよ!
テンは、火が弱くなると、また火の魔法を使った――テンって、普段あんまり魔法使わないけど、魔力どれくらい持ってるのかしら?使いすぎで切れないといいんだけど……
――とか思ってたら、氷は完全に融けてなくなった。テンは苦しそうにしてたけど、あたしに向かって「毛布出して」って指示したの。
あたしは、ベーシックな茶色い毛布と、防水用にもう1つピンクの毛布を出して、2枚重ねてから普通の人サイズにした。テンはゆっくりアリエスを抱いて、毛布の上に置いた。
テンは毛布でアリエスを包んでいたけど……あら?泣いてるのかしら?目の端に水滴が……
「リアちゃん」
「何〜?」
「戦況、どうなってる?」
「カイトが善戦……というか、変態を散々痛めつけてる」
――何かカイトって、魔法が使えないからみんなにいじられるけど、戦い慣れてるし、体や武器を使った戦いでは無敵よね。
「……お前がやったことは『ごめん』じゃ済まねえんだよ!!」
カイトはそう怒鳴ると、スコルピウスをまたお風呂へ蹴り落とした――あら、圧勝?
「……ねえ、リアちゃん」
テンが話しかけてきた。
「カイト君呼んで」
「オッケー♪」
しばらくお風呂を見つめているカイトのそばへ寄ったら、スコルピウスがお湯にぷかーって浮いてた――死んでないわよね?
「さあな。あれは少しは死地に晒さねえと、反省も謝罪もしねえ奴だ」
カイトはあたしを自分の肩の上に乗せると、テンのそばへ近づいた。テンは両腕でアリエスを抱きしめていた……やだ、ホントに『お姫様』を抱く『王子様』みたい……!
テンが、『お姫様』を運べないかも……って言ったら、
「じゃあ俺がやるから、先を急ごう!」
リーダーさすが。勇ましい……!
「リア!変態が俺たちを追いかけてこないか、見張っててくれ!」
「了解!」
テンの様子が心配になったけど、もう歩けるくらいには回復したみたい。
――すごいわねえ、『石』の力って。
「ふふ♪リア感動♪」
他の2人には聞こえない小さな声でそっとつぶやいたわ。




