210話 6月6日〜レイとテンの会話②〜
〜184話のレイとテンの調査〜
うーん……
なぜかよくわからないけど、一昨日からテンが私と手を繋ぎたがるんだよ。しかも、その手をなかなか離してくれない。
「……テン?」
「はいはい、何かな?」
「そんなに私の手は、触りたいものなのか?」
「んー、触りたいと言えば触りたいけど……」テンはニコッと笑った。「これはどちらかというと『防犯』みたいなやつで」
「『防犯』?『子どもが親と手を繋ぐ』みたいな?」
「……まあ、似てるかな。レイさんを子ども扱いしてるわけじゃないんだけど」
「そうなのか……?」
――じゃあ、私を何だと思っているのだろうか?
そういえば、私が両手でガイドブックを持って読んでいる間も、ずっと背中を手で触れられている気がする……たぶん、何かしら理由があるんだろうけど。
「それにしても、めっちゃ暑いね」と、テンは言った。「まだ夏が始まったばかりなのに」
「……昨日も同じこと言ってたぞ?」
「毎日でも言いたくなることだよ」
そこでテンは、ある通りを見つけた。
「あ。あの市場、日陰になってて涼しそうだね。人通りも少ないし」
「……行く?」
「そうしようか」
――確かにこの市場、涼しいな。店の種類も、よりどりみどりって感じで面白いし、しばらくここにいてもいいかもしれない。
歩いているうちに、かき氷を売ってる店を見つけた。
「お兄さん、お姉さん、いらっしゃい!」店のおばさんが話しかけてくる。「今日みたいに暑い日は、かき氷でもいかが?」
「あ、いいね!」テンが私の方を見た。「レイさん、食べようよ」
「んー、いいけど……」
――腹の足しにはならないんじゃないか?
でも買った後、2つのかき氷の入った容器を両手に持ってくれたから、テンの手が私から離れた――汗が引いて楽になったけど、何かちょっと寂しいかも。
「……あ。ここで食べよう」
テンが、手頃な段差のある場所を見つけ、勝手に腰を下ろした。私も少し歩き疲れていたので、隣に腰掛けることにした。
テンが、私の分のかき氷を手渡してきたので、受け取った。
「ん。うまうま」
半分くらい食べ終わった時、ふとテンの方を見ると、何か物思いにふけっていた。食べる手が止まっている。
「ねえ、レイさん」
「……ん?」
「僕に触られたくない?」
「何で?」
「さっき質問された時に、ふと嫌なのかなって思っちゃって……嫌だったらごめんね」
「別にそんなことないが」
「……あ。だったらいいんだ、気にしないで」
「…………?」
何か、ずいぶんほっとしているみたいだ。ようやくまたかき氷を食べ始めた。
そして、2人とも食べ終わった時、
「……この容器、いつまでも冷たいな」
私がぽつりとつぶやくと、テンが振り向いた。
「んー、確かにそうだね」
テンはかき氷の容器を眺めた。
「……たぶん、錬金術だよね。何の素材でできてるんだろう?」
「燃やせばわかるか?」
「え?」
私は、空の容器を魔法で燃やした。
そしたら、容器は全て蒸発し、消えてなくなった。
「……君、何でも燃やしたがるね」
「いや。たまに焼きたくなることもあるけど」
「………………」
「それよりこれ、『氷』だな」
「……え?」テンは目を瞬いた。
「そういえば、錬金術で『1000度くらいの炎で燃やさないと融けない氷』を作れる……らしい。本で読んだ」
「……へえ」テンが、面白そうに目を細めた。「真夏でも、融けないんだ」
「そうだ」
――あれ?何か引っかかる。
「……魔法で『融けない氷』は作れないのか?」
「んー……」テンは考え込んだ。「魔力がめっっっっっちゃ高い『氷魔法の達人』なら、魔力を大量に使って、そういう氷を作り出すことができるかもね」
「……『夏に氷のオブジェを作る』とか?」
「うん……え?何それ?」
「テン、」私は気づいた。「昨日見た雑誌を、もう一回見せてくれ。あのモデルの写真が見たい」
そう言ったら、なぜかテンがものすごく衝撃を受けていた。
――まあ、私はあまりそういう写真に興味がないから、意外だと思ったんだろうな。私が見たいのは、右下に書いてあった小さい説明文なんだけど。
これ、調査というより完全にデートですね笑




