209話 6月4日〜どうしてそんなに……?〜
〜180話の直後の会話〜
「なあ、どうしてテンってそんなにレイのこと好きなんだ?」
俺が「明日、レイと『石入手のための手がかり探し』という名のデートをしていい」というようなことを言ったら、テンは諸手を挙げて大喜びしていた。
――それが、純粋に不思議だった。
テンのことだから、にこにこ笑いながらいくつも理由を挙げるのか――と思ったら、意外と真剣に悩んでいた。
「……僕も不思議なんだよね」テンは首を傾げた。「正直レイさんと会うまで、誰かを好きになったことないから」
「「え?」」
俺の声が、リアとハモった。
「……何で驚くの?」
「あんた、女の子をあちこちで口説いてまわるタイプだと思ってた」
「……ひどっ!」テンは悲しそうな顔をした。「僕、そんなふうに見える!?」
「リアほどは思ってなかったが、何か慣れてる感じはしてた」
「全然慣れてないよぅ。これでも、毎日ドキドキしてるんだから」
――そうなのか。
「実際、自分でも驚いてるんだよねー」テンはぼーっとレイの寝顔を見つめた。「ホント、以前の僕は、人間不信が強かったから」
「「え?」」
また、俺とリアの声がハモった|(『人間不信』には見えなかったけど……?)。
「なのに、レイさんに対する自分の気持ちに気づいてから、なぜか抑えられなくなっちゃって……」
「……ちなみに、気づいたのはいつ?」
「ソフィアさんに指摘された時」
「「え?」」
3回目のハモりだった|(意外と遅くね?)。
「いや、あの時みんなの前で言われて、あんなに動揺するとは思ってなかったんだよ。レイさんが意味わかってなかったのが救いだったけど」
突然、テンがはあとため息をついた。
「そうか……みんな僕のこと、そんなふうに思ってたんだ……」
――どうやら、ちょっと傷つけてしまったようだ。
「……何か、勘違いしててごめん」
「そうね。あたしたちが悪かった」
「……まあ、いいんだけど」
それからテンは、帽子を手でくるくる回し始めた。
「自分でもよくわからないんだよなー。自分のことが……だから、なぜレイさんが好きなのか、全然わかんない」
――しかしこの人、人馴れしてないのに、あんなに馴れ馴れしく俺たちに接していたのか……いや、もしかしたら、馴れ馴れしくやっておきながら、人との間に壁を作ってしまうタイプなのかもしれない。
思えば、出会う前のことは全く話そうとしないし。
「……じゃあ、あんたに1つ、アドバイスをあげる」
「……え?」テンはリアの方を見た。
「あたしたちはいいけど、アリエスにだけは隠し事はなしよ。ちょっとくらいかっこ悪くても、素直さと誠実さを忘れないで」
すると、テンは悲しそうな顔をした。
「そうだね……でもそれで、嫌われたらどうしようって……僕、結構ひどい性格だから」
「そうは見えねえが」
「そうよ」リアが俺の意見に同意した。「あんたはいい人だし、そのあんたが選んだアリエスなら、あんたが本当はどんな奴だったとしても、ちゃんと受け止めてくれる」
「……だな。レイは大雑把だから、心は広いと思うぜ」
俺がそう言うと、急にテンの顔が明るくなった。
「リアちゃん、カイト君、ありがとう!レイさんともっと仲良くなったら、僕がどんな悪党だったか、素直にレイさんに教えるから!」
「あ、悪党?」俺は首を傾げた。「全然そうは見えないが」
「……はっきり言って、いつ逮捕されても、いつ死んでも、おかしくないくらい悪い奴だから!」
「「………………?」」
この前、軍に捕まりかけた時は、そんなことはひと言も言ってなかったが。
「……ま、とにかく頑張んなさい。アリエス、めっちゃ鈍感だから」
「……あー。だからテンと相性がいいのか」
リアと俺がそう言うと、テンはニヤニヤ笑い始めた。「やっぱり僕じゃないと、レイさんを愛せないよね!」とか何とか言っていた。
どうもテンは、出会ってすぐの時は、初めて会う『素朴で純粋なタイプの女性』のレイに興味本位で絡んでいたみたいですが、ヴィクトリアでソフィアに恋心を指摘されてからは、彼女をかなり意識するようになったみたいです。今では、デートで手を繋ぐことさえドキドキしてるそうです。




