205話 6月8日#10
「何かあの人、余裕そうだったね」
村の中のソラの家でゆっくり休んでいる時、テンがぼそっと言った。
「……ドゥファン……隙がなかった……」
ソラは部屋の隅っこに座って、お茶のカップの中を見つめていた。
「あー、疲れた……」レイは、ラグの上でゴロゴロしていた。
「しばらく寝てていいよ。まだ本調子じゃないだろうし」
テンがそう声をかけて、毛布をレイに被せたのを見てから、リアが口を開いた。
「でも、あの様子だと、ピエール33世が『月の神』だっていうことに、全然気づいてなかったみたいよね?」
『……あー。ワタクシ、『情報の隠蔽能力』が極端に高いんです』と、ピエール33世は言った。『おそらく、ワタクシ『ピエール33世』の存在すら、彼らには気づかれてないと思います』
「それは1つ、救いだな」と、俺は借りた水で剣を洗いながら言った。
『たぶんみなさんのことも、ソフィアさんがあちらについてわかっていたようには、向こうに分析されてないと思います。』
「……何か、今までで一番すごい能力を地味に持ってたのね」
『えへ!……まあ、それでも、完全にとはいかないでしょうね。『うお座の星霊使い』さんが向こうにいる限り』
「その『ピスケス』って奴が、一番手強そうだよな」
「確かに、人の心の中を読めるらしいし」
「いろんな人を籠絡してあたしたちに送りつけて、自分は顔すら出してないし」
「ピスケス本人の能力も……未知……」
「……敵について、整理してみるか」
俺は荷物の中から、何枚か紙を取り出した。以前話し合いをした時に、テンがその内容を書き留めてくれたものだ――てか、テンの字がきれい。
「……まず、『ピース教団』そのものは、ほぼ瓦解した」
「幹部3人は、1人死んで、2人は意識不明のまま。トップは……」テンは肩をすくめた。「教団を捨てたみたいだね。どこにいるんだか、誰にもわからないみたい」
「まあ、表舞台に立ちたくないなら、妥当な判断だとは思うが……残された教団員が、ちょっとかわいそう」
「……教団員は次々捕まっている……」ソラは、ようやくお茶を飲み終わったようだ。「もしかしたら、教祖『ピスケス』についても、何かわかるかも……」
――こうしてみると、結構脆い団体だったんだな。
「次に、星霊使いについてなんだが、」俺は首を傾げた。「敵に回っているのは、ピスケスを抜くと『3人』……」
「そのうち2人はスターリアと変態だね」テンは紙を見つめた。「あと1人は『ゲミニ』……ふたご座の星霊使いか」
「何か全然魔法使わないらしいけど、一体どこで何やってるのかしら?」
「『修行』が終わってから今までに『1回も』使ってないなんて、ある意味強者だよね」
「こいつはこいつで、何か面倒だよな……」
――あとは、ドゥファン、『てんびん座の星霊使い』。
「本来持っている『言語解析能力』と、太陽の神から授かった能力……」俺は、首を傾げた。「『言語解析能力』が、どうやって攻撃魔法になるんだろう?」
「わからないけど……」テンは腕を組んだ。「君の『古代言語を理解できる能力』は、それが由来なんだろうね」
「アクアリウスとスコルピウス……また、戦いを挑むと思う……?」
「しばらくはなさそうな気もするが、どうなんだろうな……」
「あ、でもでも!」リアは元気よく手を振った。「少なくとも2人については、『攻略方法』はわかったんじゃない?」
「まあ、いくらかはな」




