203話 6月8日#08〜6発必中②〜
「『アイスキャッスル』!!」
――あれー?それ、室内用の魔法じゃないんだー。
僕の上にいくつもの先の尖った氷が現れて、頭めがけて落下してきた。
――しかし、何で『お城』なのかなあ?
「……チ!」
僕に氷の針が刺さらなくて、スカーレットが舌打ちをした。
「『アイスキャッスル』!……『アイスキャッスル』!」
――何か連続で使い始めた。
僕はスマートに避け続けたけど、氷の針が僕の周りを取り囲んで、逃げ場がなくなっちゃった。
「あらら……」
すると、スカーレットは「『アイスファイア』!」と叫んだ。
僕は、冷たい火の中に閉じ込められた。あの、城のろうそくに灯っていた、ヒエヒエの火。めっちゃ冷たかった。
でも、僕が魔法の呪文を唱えたら、だんだん火が弱くなっていった。
「え……」
僕を守ってくれたのは『水』。火の冷気を吸収して『氷』になりながら、徐々に火の勢いを弱めていった。
火が消えたのを確認して、僕を覆っていた薄い氷を蹴ったら、簡単に割れて外が見えるようになった。僕はすかさず、4発目の銃弾を撃った。
それは、スカーレットの頬に当たった。さっきのより、目にかなり近い。
スカーレットが僕の視界から逃げようと蟹歩き|(サソリ歩き?)しているので、僕は『氷の針の城』からのそのそ出る時間がとれた。
――『城』って、そういうことだったのね。
僕が一番外の氷の針からひょいと覗くと、スカーレットがひどい顔をしていた――仮にもモデルなんだから、もうちょっと余裕のある顔をした方がいいんじゃないかな?
「何なんだ、お前……星霊使いでもないのに……」
「まあ、それなりに死地を乗り越えてきましたから!」
――ホント、月の神様って運がいいよね。僕みたいな強い味方ができちゃってさ!
「お前の武器は、『銃』と……『魔法』と……『帽子』は、一体何だ?」
「……知りたい?」僕はまたにこにこ笑った。「ただの収納だよ!」
「……その中に、何が入ってる?」
「う~んとね、例えば……」
――ズダンッ!
――あー……スカーレットが急いで出した氷の棘に当たっちゃった。真面目に目を狙ったのになー……
そこでスカーレットは、何かに気づいたみたい。
「……僕が動かないから、やられ放題なんだ」
「……君、今さら気づいたの?」
すると、スカーレットは鎧をしまって立ち上がり、僕の顔を見た。
「お前の銃弾はあと1発……」急に、スカーレットは勝ち誇った笑みを浮かべた。「お前に再装填の時間は与えない。最後の1発さえ避ければ、僕の勝ちだ」
そして、今度は左足をドスンと踏みしめた。
「『スーパークーリング』!」
そして、
「『アイスファイア』!」
そして、
「『アイスキャッスル』!」
そして……
「『ペトロスティンガー』!!」
地面が崩れて、冷たい炎が僕を包み込もうとしてきて、氷の針が頭に向かって落下して、最後は例の『石化させる針』が僕の方に飛んできた。
――全部避けちゃったけど。
「……どういうこと?」
僕、結構運動神経いいんだよ。カイト君には負けるけど。
僕は、銃口をスカーレットの目に向けた。
「……今まで、男はみんな同じくらい最低だと思っていたが、」スカーレットは、僕を睨んだ。「お前が一番嫌いになった。最低だ」
「気が合うね。僕も君を最低の男だと思ってるから」
すると、スカーレットはガシッと両手を組んで、魔法の名前を言った。
「『アイスアーマー』……!」彼の体が、厚い氷に覆われる。「最後の弾を、撃てるものなら撃ってみろ。この『鎧』を突き抜けるものは、この世にそんざ……」
そこで、僕は銃をしまった。スカーレットは、一瞬、勝ち誇った顔をした。
「ははは!さすがに降参し……」
「……あとは、『君に傷つけられた本人』に任せるよ」
「……あ?」
スカーレットは、僕が見ている方を向いた。
そこにいたのは、
「よくも、好き勝手してくれたな」
――宙に浮かび、仁王立ちしているレイさん。
スカーレットが驚愕のあまり固まっているのが、透明な氷の中に見えた。
レイさんは大剣を出すことなく、魔法の名前をつぶやいた。
「……『おひつじ座の怒り』」
スカーレットの体を、円盤のように広がった2つの炎が挟み込み、その隙間に8つの炎の槍が突き刺さる。
そして円盤と槍、それぞれが、ぐるぐると回転し始めた。
「……ぎゃああああああああ!!!」
中で何が起こっているかわからないけど、たぶん円盤と、八方から刺さった槍でぐりぐりやられてるんだろうな……
――これからはレイさんを、極力怒らせないようにしよう。
炎が消えると、ちょうどその炎があったところに、スカーレットが現れた。真っ黒に焦げて、地面に倒れている。
レイさんはふうと息を吐いた。
「すごいね、レイさん」僕は、レイさんにニコッと笑いかけた。「それと、無事回復したんだね」
すると、レイさんは地面に降り、僕の方へ歩いてきた。なぜか下を向いている。
「……あの……ありがとう」
「え?」
「私のために、いろいろしてくれてたの、見てはいないんだけど、耳で聞こえていたから……」
そして、レイさんが顔を上げた。出会ってから初めて、微笑んでいる。
――僕の心臓が、ドキンと大きく動く。そうか、聞いていたのか……
「だから、みんなにありがとうって言いたい」
突然、僕はずっこけた。
――僕が特別ってわけじゃないのね。




