201話 6月8日#06
「だ、だからどうした?」
スターリアは、俺を初めて敵だと認識したようだ。
「お前は、見えない『何か』を魔法で作っているだけだ」と、俺は言った。「つまり、その『何か』は破壊可能だ」
「……なるほど……」ソラのゴーレムは、スターリアを見据えた。
「……その『何か』の性質は魔法によって違うが……たぶん、モノは同じだと思う」
――そこで、ソラは理解した。
「『音』を、『物質』に変える……!」
「……で?」スターリアは、俺を睨んだ。
「『敵』を攻略するには、その『敵』のことを分析する必要があるだろ?」
「大丈夫……カイトと一緒に戦えば……勝てる!」
俺とソラの言葉を聞き、スターリアは「チ!」と舌打ちをした。
「『グルーヴランス』!」
スターリアは、俺の方を見て槍を放った――しかし、間にゴーレムが割り込み、その槍を太腿で弾き返した。
しかも、スターリアは『グルーヴランス』に当たり、足元の『ステップ』から転げ落ちた。
「……痛っ!」
「……カイト……」ソラが俺に話しかけてきた。「魔法を出す方向を見て、攻撃してる……!」
「それは俺も思った」俺はそう言いながら、スターリアに向かって矢を放った。
スターリアは、はっとしてギターで矢を受けようとしたが、ギターを持ち上げる前に、矢が脚に突き刺さった。
「ぐぁっ!!」
「…………たあ!」
スターリアは、脚の矢を抜いて立ち上がろうとしたが、ソラの蹴りをまともに食らい、また10メートルくらい吹っ飛ばされた。
俺は剣を抜き、スターリアに向かって走っていった。
「『テンポスタンプ』!」
俺の頭上から、『何か』が落ちてくる。それを、ソラの蹴りが弾き飛ばした。
「べ、『ベースソード』!」
――槍ではなく剣を使うからには、薙ぎ払うつもりだろう。
俺は剣を叩くようにスイングした。
すると、何かが当たり、地面へ叩き落とせた感覚がした。
「……くっ!」
スターリアは立ち上がり、ギターをしっかり構え、大きく手を動かして魔法の名前を叫んだ。
「『フィーネクラッシュ』!!!」
その時、何かの影が俺を覆った。頭上を見上げると、上下逆さの巨大な水瓶があった。
「……カイト……!!」
ゴーレムが、ほとんどヘッドスライディングのようにして飛んで来た。ゴーレムの体が俺を覆い被さるのと、水瓶から高圧力の『何か』――音――が落ちてくるのは、ほぼ同時だった。
――ズドーーーーン!!!!
派手な音とともに、ソラの「うああああ!!!」と叫ぶ声が聞こえた。
俺は地面に丸まって手で耳を塞いでいたが、音が止むとまた走り出した。ソラが心配だが、俺には先にやらなければならないことがある。
俺が目の前まで迫ってくるのを見て、スターリアは、驚愕した表情をしていた。もう、何の魔法を使う暇もない。
スターリアは、ギターを構えた。俺はそのギターに剣を突き刺した。ギターは、バリンと音を立てて割れた。
――そして、剣はそのまま、スターリアの腹に突き刺さった。
「……ぐぎゃああああぁぁぁぁ!!!」
スターリアの断末魔の叫びが、あたりにこだました。
「て!てめえ……!!」
剣を抜くと、スターリアは腹を抱えてその場に倒れ、はあはあ言いながら俺を睨んだ。
「あ……アタシを……殺す気……か……!?」
「……どうせ、魔法で治せるだろ?」
――俺は、テンに再生能力がある理由を、忘れたわけではなかった。
「……こ……ここに、もう近づかないで……!……どこかへ行って……もう来ないで……!!」
俺が布で剣についた血を拭いていると、人間のソラがやって来た。苦しそうだが、2本足で歩けるようだ。
「……チ!わかったよ!」
スターリアはそう言って、そっぽを向いた。
「帰るから……そっとしておいてくれよ……!」
俺とソラは、少しの間スターリアを見つめると、後ろを振り向き村へ帰っていった。
スターリアは地面にうずくまってぐったりしていたが、その後二度と村に姿を現すことはなかった。




