198話 6月8日#03
リアは、疲れてその場に倒れた。他の誰もリアを気に留めなかったので、俺はそっとリアを回収して、テーブルの上のリアのクッションの上に寝かせてやった。
「『石化』ねえ」ソラの祖母はそっとレイに触れた。「確かに、うちに『石化』を治す薬草があると思う」
しばらくソラの祖母はレイの様子を観察した後、首元にあるネックレスに触れた。
「おや、これは……?」
『……あ、どーも!』ピエールネックレスが答えた。『ワタクシ、『月の神』改め『ピエールネックレス』と申しますっ!』
「月の神……そう、あなたが……」
「彼が……あ、いや彼女が……レイさんの『石化』の進行を遅らせているんです」
そう言った後、テンは『彼』と『彼女』のどっちを使うか悩んでいた。
『あー、ワタクシ性別ないんで、テキトーに『それ』とか言っちゃって大丈夫ですよー!』
「いや、神様相手に『それ』はちょっと……」
「……なるほどね」ソラの祖母は頷いた。「確かに、まだ助かるかもしれないね……ちょっと在庫があるか見てくるから、ソラはお湯を沸かす準備をしておいてくれ」
「……わかった……!」
ソラは部屋から出ていくと、やがて携帯型のコンロと小さな鍋を持ってきた。鍋には水が入っている。
「ソラちゃんの家って、素朴でいい感じだね」
テンがそう話しかけると、ソラは「うん……」と答えた。
「ばあさんも優しそうだし、いい環境で育ったんだな」
俺もそう言うと、ソラは「うん……」と答えた。
それからしばらく会話はなかったが、ふと見ると、テンがレイの手をそっと触っていた。もしかすると、相当不安なのかもしれない。
やがて、ソラの祖母が帰ってきた。小さな皿を手にしている。
「『ディザリアス』の葉だよ。細かく刻んできたから、後は煎じるだけ」
ソラの祖母はクッションの上にゆっくりと座ると、皿の上の薬草を鍋の中へ入れた。
「おばあちゃん、ありがとう……」
「……そうそう。見せてあげようと思って、もう1枚葉っぱを持ってきたよ」
ソラの祖母はそう言って、1枚の長い葉っぱを取り出した。乾燥して少し縮んでいるが、『薬草大全』に描かれていた絵とそっくり同じハートの連なった形をしていた。
「この植物、『カサンドラ山』に一番よく生えてるんだよ」
「『カサンドラ山』……?」どこかで聞いたことのある名前だ。
「この国で、一番高い山……」と、ソラは説明した。「標高が、4100メートル以上ある……」
「他にも3000メートルとか4000メートルくらいの山が、ウチの村の近くには多くてね」
「え……」
ソラの話では、村を外れた『ちょっとそのあたりの山』くらいで入手できるというイメージを持っていたが、実際には『ディザリアス』を含めた高山植物は、そういった高い山を登ったところで採集するようだ。




