197話 6月8日#02
「着いたよ……!」
目が覚めると、ソラの言うとおりすぐ近くに村らしきものがあった。
村は、丸太を並べて作られた柵でぐるりと囲まれていた。門の両脇に櫓があり、その一番高いところにいた見張り番が「ソラちゃんがまた帰ってきたぞー!」と叫んだ。
俺たちがゴーレムから降り、ソラがゴーレムをしまったところで門が開き、奥から年老いた女性が歩いてきた。
「おばあちゃん……」ソラは女性に駆け寄った。「仲間が大変……助けたい……!」
「……そうかい」
女性はそれだけ言うと、俺たちの方に目を向けた。
「こ、こんにちは……」
「お、おじゃましまーす……」
「え、えーっと……」
「みんなあたしの仲間、友だち……いい人……」
「……そうかい」
女性はそれだけ言うと、手招きして村の奥へと歩いていった。
女性――ソラの祖母――は、俺たちを自分の家に上がらせると、部屋に敷かれたラグの上にクッションを並べて、「その上で座って待ってて」と指示をして、どこかへと去っていった。
家の中は快適で隙間風がなく、山の上特有の強風にも耐えられるような石の壁に囲まれていた。
床に大きなラグと、たくさんのクッションが無造作に置かれていた。どれも独特のきれいな模様が刺繍されていて、その刺繍も、赤や黄色、緑などの鮮やかな色の糸を使っていた。
やがてソラの祖母は、トレイにお茶を乗せて現れた。お茶は全員に振る舞われたが、リアは自分が小さくてそのままでは飲めないので、カップの取っ手に掴まりながら、器用に自分用のカップですくって飲んでいた。
「改めまして、こんにちは」と、俺は言った。「ソラと一緒に旅をしている、カイトといいます」
「おや。行儀のいい子だね」ソラの祖母はニコッと笑った。「ソラから少し話を聞いたけど、優しくて頼れるリーダーなんだって?」
「『リーダー』……まあ、何だかんだ、みんなに指示出してますけど……」
「……あ。僕はテンです」テンはお茶のカップを持ったまま言った。「本当の名前は発音が難しいので、テンって呼んでくださいね!」
――本当に、自分の名前が嫌いなんだろうな。『テン』で押し切ろうとしている。
「あなたも優しいいい人なんだって?」ソラの祖母は、テンにもニッコリ笑った。「恋人のために、毎日体を張って頑張ってるって……」
それを聞いて、テンはお茶を吹き出しそうになった。
「こ、こいび……ソラちゃん!おばあさんに、一体何て話したの?」
「……事実を言った……」
「………………」
「……あ!あたしはリアよ!」リアは元気よく手を上げた。「あたしはね、『いて座の星霊使い』なのよ!」
「ああ。この子がそうなの」ソラの祖母はうんうん頷いた。「いつも元気で、ソラをたくさん笑わせてくれるらしいじゃない」
「……レオって、笑ったことあったっけ?」
「……おばあちゃん……」ソラは祖母の肩をとんとん叩いた。「もう1人の仲間のレイが、大変なの……」
「リアちゃん。レイさん出すから覚悟してね」
「わ!わかってるわよ!」
リアは、今回は素直に弓矢を取り出した。
テンは、大切に持ってきたバッグの中からレイを取り出し、そっとラグの上に置いた。
「いくわよ!」リアは弓を引き絞った。「『ラバーショット:マグヌス』!!」
リアの矢がレイに刺さると、小さくした時を逆回しに見ているかのように、今度はぐんぐん大きくなっていった。
やがて、普通の人間の大きさに戻り、体の伸長も止まった。
するとテンは、レイの顔に自分の顔を近づけて、しばらく動きを止めた。
「……よかった。ちゃんと呼吸している」テンは安堵の息を吐いた。
「この人が、大変なの……」ソラは、祖母に訴えた。「『石化』して……死にそうになってる……!」




