196話 6月7日#04−6月8日#01
こうして、俺たちは何とかアポロに向かって移動する用意を済ませた。
事前の打ち合わせで、途中で休憩を少しずつ入れ、夜間は休むことになった。ソラは「徹夜でも行ける……」とは言っていたが、1人だけ重労働させているのに全く眠らせないというのは、俺たちが許さなかった。
食料は、市場でささっと集め、それまでの備蓄と合わせてまかなうことにした。
どうやら月の神は、『同じ場所|(基準は緩め)にあるものなら、2つ以上の物に分裂できる』らしいので、食事休憩の時はその都度、人目につかないところで、ピエールキッチンとピエールネックレスに分かれて、キッチンで俺たちが料理をすることになった。
「あとは、無事門を通り抜けられるかだが……」
いちおう検査されても大丈夫なように、全員がバッグを持って、レイとリアをテンのバッグの中に入れて、城門に向かった――けれど、結局バッグの中身を検査されることはなく、杞憂に終わった。
十分にプルートーから離れ、周りに人がいないことを確認し、ソラはゴーレムを出現させた――のと同時に、ソラ本人はいなくなった。
「胸の中に、人が入れるスペースがある……そんなに揺れないから、入ってて……」
『女性|(?)の胸の中』という響きが何ともいえなかったが、乗り物だと割り切ってそのスペースに入ってみたら、意外と快適だった。なぜかわからないけど、ふかふかの椅子があるし。外の景色も見えるし。
ソラのゴーレムは、登山道を思いっきり無視して、走ったりジャンプしたりして目的地へ猛進した。「体力的に大丈夫なのか?」と心配にはなったが、ゴーレム出している間はそんなに体力を使わないのか、それともソラ自身が体力オバケなのか、その日は暗くなるまで同じ調子で移動し続けた。
『いちにちお疲れ様です!』夕飯の調理をしている時、ピエールキッチンがソラを労った。『ソラさん。ハーブティーでも飲んで、ごはんができるのを待っててくださいね!』
「何か、もうしょうがないけど、」テンは、野菜を切りながら言った。「最年少の女の子を走り回らせて、僕たちがのんびりしてるなんて、すごく罪悪感あるよね」
「ううん……あたしなら、心配ない……」ソラは首を振った。
「……半日、あんなに激しく動き回って?」俺は、木の棒で肉を叩きながら言った。「あれ、明日もやったらへばるだろ」
「……今日プルートーへ戻ってくるまでも、同じ感じで走ってた……」
「「へー……」」
どうやら、ソラは体力オバケのようだった。
翌日。
本当に、今日もソラは同じ調子で、山の中を走り続けていた。
「なあ、テン」
「……ん?」
「あの変態、俺たちのことを追ってくると思う?」
「どーだろーねー……」テンはあくびをした。「でもあの人、心が根底からねじ曲がってるみたいだから、執念深く追ってきそうだよね」
「でも、その方がいいかもよ?」と、リアが会話に加わった――昨日の疲れを引きずっているのか、元気がない。「あいつをあたしたちが引きつけている間に、囚われている女の子たちを警察が助けられるから」
――そう。結局俺たちは、あの城にいた女性たちを助けられなかった。
でもその後、街まで下りていった時に警官に事情をかいつまんで話したら、「調べてみる」と言ってくれたので、生き残った人はもしかしたら助かるかもしれない。
「あと、一番重要な『石』だよねー」と、テンは気怠そうに言った――昨日、寝る前にいろいろ思い悩んでいたみたいなので、寝不足なのかもしれない。
「あの城のどこかにあるって言ってたよな」俺も何か眠くなってきた――俺も、一昨日からあまりしっかり寝てないからな。「あんな広い城の中を全部探すとなると、相当骨が折れるぞ」
「そうねー……」リアは、自分のクッションを敷いて、その上に寝そべっている。「どうしましょうねー……」
「うーん……」
「「「………………」」」
――結局、ソラが走り回っている間、男3人はぐーぐー眠ってしまっていた。何か本当に、ソラに申しわけない。




