195話 6月7日#03
――城門をどうやって突破するか。
俺たちは、大きな問題に直面した。
「レイさんを普通に運んでも、ソラちゃんのゴーレムで運んでも、兵士に止められるのは明らかだよね」
「後は……何だろう?何かいい案ある?」
みんなでうーんと考え込んだ。
「あ、じゃあ♪」リアがぱちんと手を打った。「馬車使うのはどう?荷物にアリエス隠してさ!」
「……ムリ」ソラは首を振った。「馬はあんな山道、歩けない……」
「じゃあ、アポロまで物資を運ぶのどうやってるの?」テンは首を傾げた。
「ロバを使う……でも、車使わないで、荷物を少なめにして運ぶ……」
「……じゃあ、レイを隠せないか」
俺は顎に手を当てて考えたが、何も思いつかない。
しばらくして、ふとテンの目線がリアに注がれていることに気づいた。リアもそれに気づいて、笑いながらくるんと回ってポーズをとっていた。
「あらやだ〜♡そんなに見つめて♡あたしの魅力に、今ごろ気づいたの〜?」
「……リアちゃんって、どうしてそんなにちっちゃいの?」
「え……?」リアの表情が固まった。
「そういえば、」俺もリアを見つめた。「お前、魔法で物の大きさを変えられるよな……あれ、自分にもかけてるだろ?」
「え……?」
「……ということは……人間の大きさも、変えられる……?」
その場にいる全員の視線を受けて、リアは顔を引きつらせた。
「え、ええっとね……あ!」リアは、再びぱちんと手を打った。「も、もし!そんなことして『石化』が悪化したら、あたしは責任とれ……」
「……できるんだな?」
「……あ、あはは……」俺に睨まれて、リアは顔を青くさせた。
そんなわけで。
俺たちはレイの体を小さくして運ぶことにした。
リアが言うには、小さくした後に元の大きさに戻そうとした時、小さくする前と全く同じ大きさに戻すのはかなり難しいらしい。
そして、人間くらい複雑なものの大きさを変えるには、「リア死んじゃう!」くらいの魔力が必要らしい――つまり、リアが乗り気でないのは、単に自分が疲れたくないからだった。
ピエールネックレスは自力で小さくなれるので、問題はリアをやる気にさせられるかどうかである。
「ね、ねえ。テン?」リアは、さっきから悪あがきし続けていた。「元に戻した時、アリエスが自分より背が高くなったり、めちゃくちゃ太っちゃったりしたら、嫌でしょ?」
「……別に」テンは、表情を変えることなく答えた。「見た目変わっても、愛せる自信あるし」
「な、何、その男前発言……」リアが、なぜかドン引きしている。「じゃ、じゃあ、レオ!魔力なくなったらすごく辛くなるじゃん。あれ、すごく嫌じゃない?」
「……眠れば治る……」
リアが、衝撃を受けた顔をしていた。
「じ、じゃあ、カイト……」
「……いい加減、腹を括れ」
俺に睨まれ、リアは泣き落とし作戦に出た。
「り、リア……別にちっちゃくなりたいから、ちっちゃくなったんじゃないの……あれは不慮の事故で……」
俺はリアの前にしゃがんで、指で思いっきりリアを弾いた。
「い、痛っ!」リアはベンチに座り込んだ。「な、何するのよ、『脳筋』!」
「お前……レイがこのまま死んでもいいのか?」
「え、えっと、よくはないけど……」リアは手をもじもじさせた。「でも、ここであたしを頼るのはお門違いっていうか……」
俺たち3人は、リアに視線を注ぎ続けた。
「……わ、わかったわよ!」リアは、自分の弓矢を取り出した。「小さくすればいいんでしょ、小さく!」
リアは弓に矢をつがえ、「『ラバーショット:パルヴス』!」と叫んだ。
矢は、いつもの妙な放物線を描いて、レイのへそのあたりに真上から当たった。
すると、レイの体がビクッと動いた。そして、ゆっくりと縮みだした。
縮む速度はどんどん増し、やがてまたゆっくりになった。
変化が止まったのを確認すると、テンはレイの体を手のひらに乗せた。レイは、テンの手のひらと同じくらいの大きさになっていた。
「り、リア……もうだめ……」リアはそう言って、ぱたんとベンチに寝てしまった。仕方なく、リアは俺が回収した。




