194話 6月7日#02
レイに服を着せた後、俺たちは山を下り始めた。
幸い、『俺たちがあまり目立たな』そうな公園をすぐ見つけた。大通りからは外れていて、柔らかい朝日がベンチを照らしている。
「レイさんの体、太陽の光であったまるといいんだけど」
「とりあえず、レイのことはよろしく」
俺はそう言い残し、ソラが帰ってくるはずの城門へと向かった。
そして午前8時頃に、見慣れたツインテールの少女が、門兵から離れてこちらに近づいてくるのが見えた。
「……カイト……」
「おお、ソラ!」俺もソラへ近づいた。「よかった。わりと早く来てくれて!」
「……みんなは?」
「それが、ちょっと大変なことになってて……」俺はソラを手招きした。「できるだけ早く来てほしい。走れるか?」
「……うん、大丈夫……!」
俺は公園までソラを連れていく間に、簡単に状況を説明した。
「『石化』の症状を抑える薬草……」公園にたどり着くと、ソラは『薬草大全』という題名の本をぱらぱらめくった。「確かこのあたりに……あった……!」
ソラは本のページを指さした。
「『ディザリアス』……この草がそう……!」
「へえ。変わった葉っぱだね」テンは、さっきまでより明るい声で言った。レイの体が少しずつ暖まってきたからだろう。
『ディザリアス』という植物は、いくつものハートの形を直線上に並べたような独特な葉の形をしていた。
『石化』の症状の中で、まだ臓器が動いている初期状態の人に有効。飲ませ方も簡単で、水に刻んだ葉を入れて、火にかけて煮出すだけ。
――しかも、
「『即効性がある』!?」俺は目を見開いた。「じゃあ、早くレイに飲ませてあげれば……!」
「『2、3時間で効き始める』!」テンも嬉しそうだ。「じゃあ、早く探して……!」
「待って、問題もある……」と、ソラは言った。「流通量が少ないから、薬局や市場では買えない……」
「しかも『高山植物』って書いてあるわよ?」と、リアが本の上に乗って、指をさした。
「……でも、うちの郷の近くの山でも採集できるかも……ということは、」
ソラは顔を上げた。
「おばあちゃんの店に、『ディザリアス』の葉があるかも……!」
『「「「……え?」」」』
聞いたところによると、ソラの祖母は、昔ながらの薬草を使った薬屋を営んでいるらしい。ソラの故郷『アポロ』で有名な薬屋なんだとか。
アポロの周辺の山には珍しい高山植物が多く、その薬屋には、そういう植物の葉を採取して『時間凍結』したものが、たくさん置いてあるそうだ。
「もしなくても……おばあちゃんなら、どこに生えてるか知ってるかもしれない……」
「おお!……で、」俺はレイの首元のピエールネックレスに訊ねた。「レイの体、どのくらい保ちそうか?」
『『たぶん』なので、あんまりアテにしすぎないでほしいのですが……明後日くらいまでは、今くらいの症状で抑えられる気がします』
「そんな短いのか……」俺はぼんやりと考えた。「どうしよう?アポロまで行って、とって帰ってくるのじゃ遅いよな……?」
「ソラちゃんの足で2日かかるんだから、どう転んでもレイさんをアポロまで連れていくしかないよ」と、テンは言った。
「……ピエールネックレスって、分裂して、片方郷まで飛んで行けないの?」
『できません』
リアの質問に、ピエールネックレスはきっぱりと答えた。
『あと、ワタクシではアポロまでは飛べません……アポロって、標高が1800メートルくらいあるんですよ。そこまでの道のりは、ほぼ登山です』
「みんなを、あたしのゴーレムで運ぶから……みんなは歩く心配しなくていい……」
「ごめんね、ソラちゃん」と、テンは謝った。「君に頼るのが一番早そうだから、キツイと思うけど頑張ってね」
「……うん。頑張る……!」
「……で、」リアは渋い顔をした。「どうやってこの街を抜ける?」




