189話 6月6日#06
「……いってえ…………」
俺は、何とか起き上がった。頭を打たないよう、咄嗟に受け身の姿勢をとったのが幸いし、ちょっと脚を擦りむいただけで無事だった。
「イタタタ……」リアも俺の上に落ちてきていて、無事だった。
「………………」
「テンは?」
はっとすると、崩れ落ちた石材の中に埋もれている。頭から血を流しているようだ。
「「テン!!」」
俺はリアを肩に乗せると、急いでテンに近づいた。
石材の隙間からテンを引きずり出したが、動く様子がない。
――と思ったら、「うーん……」と唸りながら、自力で体を起こした。
「……はー、よかった」リアは息を吐いた。「誰も死んでなくて……」
「……ああ」俺はテンの顔を覗き込んだ。「大丈夫か?どこか怪我しているみたいだが」
「ちょっと頭を打ったかもね……」テンは自分の頭を触った。「大丈夫だよ。帽子被ってたから、そんなに重傷ではないはず……」
テンは、床に落ちていた帽子を拾うと、中からランプと鏡を取り出した。ランプに火を点けると、周囲の様子がよく見えるようになった。
周りは、瓦礫の山しかなく、暗かった。だが遠くをよく見ると、自分たちは少し広めの部屋にいて、奥に通路らしきものもあることがわかった。天井は高く、残念ながら落ちてきた穴へ這い上がるのは無理そうだ。
「……大丈夫そうだね」テンは、鏡で自分の頭の様子を観察していた。「『石』の力で傷口も塞がったみたいだし。内部出血しててすぐ死ぬかもだけど」
「あんまり不吉なこと言わないでよ」リアはそう言ってむくれた。
「それより、急がないと」テンはランプを掲げて、周囲を見渡した。「とりあえず、あの見えてる通路に向かおう!走って!」
テンが突然走り始めたので、俺も慌てて瓦礫の山から降り、テンの後に続いた。
「急にどうしたんだ?」
「あの黄色い粉の薬……僕の考えが正しければ、ひじょーーーにヤバいやつだ」
「え?」
「床が崩れる直前に、部屋の中にいたお姉さんたちの様子見た?」
「い、いや、見てない……」
「全員、レイさんと同じで、動けなくなって倒れてた」
「……あの『粉』のせい?」俺は首を傾げた。「俺たちは何ともないけど?」
「あれね、吸い込んだ人を麻痺させる薬なんだけどね……」テンは、今までで一番深刻そうな顔をしていた。「女性にだけ効くんだよ。男には無害で」
「……は?何それ?そんなのあるの?」
俺は、唖然とした。
「うん。闇市とかでよく売られてるんだけどね……」
「そんなもの、何に使うのよ?」と、リアが訊ねた。
「そういうの欲しがる『ド変態』が、この世にいっぱいいるんだよ。僕たちには関係ないけど」
「マジかよ!?」俺はひどく嫌な気分になった。
「そういう薬使う男のそばに、レイさん置いとけないでしょ!」
「やっぱ最初から、あの男は変態だと思ってたのよねー」
「お前、ファンじゃなかったっけ?」
「……何の話かしら?」
「とにかく急いで!階段を探そう!」
???:それにしても、テン君。よくそんな薬の存在を知ってましたね。
テン:え?あ、あー……ど、どうしてでしょうかね。アハハ……




