188話 6月6日#05
傲慢。わがまま。短気。ナルシスト。そして、男性に対する異常な嫌悪と、女性に対するねじ曲がった情欲。
とんでもない性格が、スカーレットの中に寄り集まっている。
「しかし、まさかおひつじ座の星霊使いが女だったとはな」何の癖なのかは知らないが、また下唇を舌で舐めた。「こいつを『調教』したら、どうなるんだろうな」
テンが、そっとレイの方へ近づこうとしていた。俺もゆっくりと移動して、スカーレットを攻撃範囲内に収めようとした。
「あー、そう。言い忘れてたが、『石』はこの城のどこかにある。欲しけりゃ持っていけよ……見つけられたらな」
そして、スカーレットは一歩前へ踏み出し、同時に「『アイスキャッスル』!」と叫んだ。
部屋の壁全体に、城の尖塔のような鋭い氷の棘が生えてきた。天井にも同じく氷の槍が形成され、俺たちを串刺しにしようとしていた。
俺は、何とか攻撃を避けて、恐る恐る棘の上に靴を乗せた――ものすごく硬い。この棘に刺されたら、確実に死ぬ。
「『クリムゾンブレス』!」
レイが火のブレスを剣から噴き出させる。『アイスキャッスル』の棘が融け始めた。
「へえー、なるほど」
ブレスを軽くかわすと、スカーレットは1回の跳躍でレイのすぐ近くまでやって来た。レイは驚いて、後ろへ飛び退こうとした。
「レイさん、危ない!」
テンがレイの元へ行こうとするが、
「『アイスバーン』」
足元がツルツルの氷に覆われ、テンは派手にすっ転んだ。
「『路面凍結』……!?」確かに、足元がツルツルで、まともに歩けそうもなかった。
――これは、俺も迂闊には動けない。
一方レイは、近づいてくるスカーレットを剣で薙ぎ払おうとした。
だが、スカーレットの体は刃を弾いた。スカーレットは傷つくことなく、右手でレイの足首を掴んだ。
「『サンダーショット:ハスタ!』」
雷を帯びたリアの矢が、普通の矢のサイズになってスカーレットに飛んで行った。しかし、これもスカーレットの体には刺さらず、スカーレットに雷は当たらなかった。
「な……何で……?」
この様子だと、俺の弓矢も効かない。
「何だよ、こいつ!?」俺は、スカーレットをどうにか妨害する方法を探した。
「は〜な〜せ〜!」レイは、掴まれていない足で、スカーレットの頭を何度も蹴った。
「……お前には『仕置き』が必要だな」
――ヤバい。絶対、これはヤバい。
「いいか?僕に従順になれ。そうしたら、命は助けてやるから、抵抗するのは……」
「……『ミラージブラスト』!」
熱風が吹き荒れ、部屋の温度が上がって『アイスバーン』が融け始めた。
――だが、
「いい魔法持ってるな」
スカーレットは、全く気にしていない。
それどころか、懐から取り出した袋を片手で開け、中に入っていた黄色い粉を、熱風に乗せて部屋中に撒き散らした。
「な、何こ……くしゅん!」
みんなで粉を吸ってくしゃみをしていると、スカーレットの声が聞こえてきた。
「そうだ。おとなしくしていれば、命は助けてやる」
気がつくと、スカーレットがレイを両腕で抱いている。レイは何があったのか、ピクリとも動かなかった。
「レイさんを、離せ!」テンは、銃に入っていた弾を取り出し、何か違う弾を装填して、引き金を引いた。
しかしスカーレットは、素早くその弾を腕の中のレイで受け止めた。レイは血を流している様子はないが、動き出すこともなかった。
「ふん」スカーレットは鼻で笑った。
――何か、レイを助ける方法を……!
「男は要らん……地獄に落ちろ」
スカーレットが地面を踏みしめると、丈夫なはずの石の床がひび割れ始めた。え?と思う間もなく、床が、ガラガラと崩れ落ちる。
「「「うわあああああああ!!!」」」
その上に乗っていた俺とリアとテンは、床と一緒に階下の暗闇の中へと落ちていった。




