187話 6月6日#04
「お前は、『男の正しい選び方』を知らない」
「……何それ?」レイは首を傾げた。
スカーレットはしばらくレイを見つめた後、突然レイに向かって指を突き立て、「『ペトロスティンガー』!」と叫んだ。
――のと同時に、レイの前に大剣が現れ、飛んできた針のようなものを弾き飛ばした。
――のと、さらに同時に、テンの銃が火を噴いた。
銃弾はスカーレットの右手をかするように飛んでいき、壁にひびを入れた。
「……痛えな!」スカーレットはテンを睨んだ。「何するんだ!」
「警告だよ」テンは、いつもとは異なり全く笑ってなかった。「それ以上、レイさんには何もするな」
「……偉そうな口を利くんじゃねえ」スカーレットは後ろへ下がった。「お前の言う『レイさん』は、僕のモノだ」
「……は?」テンは目を見開いた。
そして、スカーレットは近くにいた女性の腕を掴んで、自分の前に立たせた。
「女は全部、僕のモノだ」
女性は痛がっているが、スカーレットは意に介さなかった。
「この世に男は、僕だけで十分だ」
「………………」
テンは銃をしまった。女性に弾が当たることを避けるためだろう。
「……とりあえず、意味のわからない理屈こねるの、やめてもらえる?」
「男を相手するなんて、僕の趣味じゃないんだが、」スカーレットは、女性を盾のように自分の前へ立たせた。「全員死ぬまで氷漬けにしてやる……『アブソリュートゼロ』!」
「『ウールプロテクション』!」レイが叫ぶと、俺とピエール33世、リア、テンの周りに羊毛が巻き付いてきた。
部屋の温度が、急速に下がっていく。手足から熱が下がり、体の自由が奪われる。
だがそう思った直後、レイは「『フラッシュバック』!」と叫んだ。
羊毛の1本1本を伝って、熱い炎が広がっていく。当たった一瞬は熱かったが、炎は俺を包み込み、体をほんのりと温めてくれた。
やがて室温が上がっていき、元の『ちょっと寒い』くらいまでに戻った。奥にいる女性たちも無事で、ただ1人、スカーレットだけが、火だるまになって苦しんでいた。
スカーレットに盾にされていた女性も無事だったが、スカーレットを包む炎にかなり近いところにいた。テンは素早く彼女の腕を掴み、「みんなと一緒に逃げて!」と言って、彼女を部屋の外へ押し出そうとした。
「……い、いや……」女性は、なぜか抵抗した。「私は、す、スカーレット様と、一緒にいる……」
「……え?」
他の女性たちも、首を振って、壁際から動こうとしない。
「な?女は僕に従順になるべきなんだ」ようやく炎から解放されたスカーレットが、フラフラしながら言った。「それが女にとっての幸福だ……僕は、世界で一番美しいんだ。そんな僕と一緒になれて、嬉しくない女なんかいないだろ?」
――明らかに、彼女たちは幸せそうには見えない。みんな、どちらかというと怖がっているようだ。
だが、女性たちは、誰一人としてその場から動こうとはしなかった。
「いいだろ、羨ましいだろ。僕ほどの美貌と力があれば、これだけの数の女を思いどおりにできるんだ……」
この人の理屈は全く理解できないが、1つわかったことがある。
「こいつ……中身が世界最悪なんだ……!!」
スカーレット……最悪です。




