185話 6月6日#02
夕飯を食べ終えると、俺たちは城の入口までやって来た。誰もいない。
「何か、かえって不気味よね」リアは、俺の肩の上で囁くように言った。
「一応、観光名所なんだけどね」テンは首を傾げた。
「とりあえず、入ってみる?」
「ちょっとだけにしてよ?」
「怖いのか、リア?」
「あ!違うわ!肝試し的な話じゃなくて!」リアは慌てていた。「本当にこの城が崩れてきたら、下敷きになって死んじゃいそうで……」
「ふーん」
俺は、門をゆっくりと押してみた。
「……開くね」
「開くな」
「開いたわね」
「……じゃ、肝試しにれっつごー」
レイが先頭を切って歩き出した。
「ちょ!肝試しするために来たんじゃないでしょうが!」
「てか、レイさん待って!もしかしたら危ないかもしれないから!」
「……行くか」
俺たちは、門を通って、城の玄関を目指して歩き始めた。
城は、確かにあまり手入れされていないようで、庭の草が伸び放題になっていて歩きづらかった。
だが、城本体を見た時に、俺たちは首を傾げた。
「『崩れてる』って話だったけど……」
「どこも崩れてないわね」
ピエール33世があちこち照らしてくれたが、見える範囲で崩れていそうなところはなかった。
「内部が崩れてるってことか?」
「じゃ、開けてみよー」
レイがそう言って、鉄製の玄関の扉を両手で引いて開けようとした。
「あれ?開かない……」
「僕も手伝うよ」
レイとテンは、一緒に押したり引いたりしてみたが、扉は固く閉ざされたままだ。
「鍵がかかってるのかな……?」
「あ、ちょっと待ってくれ」レイは、足元を見つめた。「これ、凍ってる……」
足元をランプで照らすと、確かに氷と霜らしきものが、扉の下の端を覆っていた。
「夏なのに、氷が張ってる……」
「……融かすか」
『「「「え?」」」』
レイが再び扉に触れると、「シュー」という音が立ち、扉の隙間から湯気が噴き出てきた。
その後、レイはテンと一緒に扉を引いた。玄関の扉は重々しい音を立てて、ゆっくりと開いた。
俺たちは中へ入り……そして、驚いて呆然とした。
――玄関が明るい。
正確には、玄関を、多数の真っ青な炎が照らしていた。頭上のシャンデリアにも、壁に等間隔に並べられたろうそくにも、青い炎が点いている。
「……何、この『いかにも幽霊屋敷です』みたいな照明は?」
「……つーか、寒い」俺は鳥肌が立つのを感じた。「外より10度くらい低いんじゃないか?」
「確かに涼しすぎるよね……」テンはそう言いながら、上着を羽織った。「春服でも寒気を感じる室温だね」
「えー」レイはそう言いながら、ろうそくの炎をつんつんつついた。
「レイさん、そんなことしたらあぶな……て、レイさん火傷しないんだっけ?」
「んー……というより、この炎冷たいぞ」
「……え?」
テンは、さっと炎の上を横切るように手をかざした。
そして、目を大きく開いた。
「確かに」
「どういうこと?」
「手をかざしてみればわかるよ」
俺とリアも、手近なろうそくの炎に手をかざした。
「何これ!?」
「ろうそくも、氷漬けみたいに冷たいし!」
「てか、霜が降りてるわよ!」
霜が降りている火のついたろうそくなんて、見たことないぞ!?




