184話 6月6日#01
翌日。
レイとテンは引き続き街の調査を、俺たちは旅の資金稼ぎをすることになった――といっても、リアは完全に戦力外なのだが。
「何であたし向けの仕事がないのよ!」
「お前ほどちっこい人間が、他にいないからだろ!?」
結局俺がいつもの街の巡回警備の仕事を引き受けている間、リアは『ありさん』の建物の中で待機することになった。
「もー!つまんなくて、リア死んじゃう!」
でも、この日は俺もピエール33世もフルで仕事に入れたので、かなり良い稼ぎになった。
そしてその日の夕方。
俺たちとレイとテンが待ち合わせて、一緒に食堂で鍋料理を食べていた。
「あのさ、レイさんが発見したんだけど、」
と、テンは鍋をかき混ぜながら言った。
「――ちょっとリアちゃん。一昨日見せてくれた雑誌、カイト君たちにも見せてあげなよ――あ。サイズ大きくしてね」
「ええ。いいわよ♪カイト、両手を出して♪」
俺の両手に、普通の人間用サイズの雑誌が現れた。
「その見開きにいるスカーレットの写真見てみて」
『「「……?」」』
俺たちは写真を見た。錬金術で色を染めたカラー写真ではあるが、特にこれといって気になる点はない。
「はー。レイさんが『もう一度それ見たい』って言ったときには、一瞬ドキドキしちゃった……」
「……何で?」
レイのひとことにテンが傷つき、テンはしばらく、鍋を機械のようにかき混ぜ始めた。
「そんなことより、この写真がどうかしたのか?」
俺が説明を促すと、レイが答えてくれた。
「写真が、というより、その隅にある説明文を見てくれ」
レイに言われたとおり、説明文を見た。
「その人、『氷霜の貴公子』って呼ばれているらしいな」
「え、ええ。そうよ」
「その下に、『夏のケレスで大きな氷のオブジェを作ってみせて、注目を浴びた』とか書いてないか?」
「ええ」
「……ということは、その人、『夏でも融けない氷』を作れるんじゃないか?」
「ええ。そうね」
リアははて、と首を傾げた。
「あたしたち、どこかでそんな話してたわよね」
「『夏でも城に氷が張る』って話をしたときだ」
「悪ガキの肝試しの話か!」俺はぱんと手を打った。「え?じゃあ、もしかして……!」
「その人が、城を出入りして何かしてる可能性あるよな?」
『すばらしいです、レイさん!』ピエール33世が白く光りながらその場を回った。『着眼点がすばらしい!』
「で、でも!」リアは慌てて言った。「あのスカーレット様が、城で何をしているっていうの?」
「それは私もわからんが」レイは、鍋をかき混ぜすぎて具材を溶かしているテンの手を止めながら言った。「その人に会いたければ、城を調査してみる手はあると思う」
「確かに」俺はそう言いながらも、うーんと唸った。「だけど、今城は崩れかけてて、危ない状態なんだろ?」
「崩れてきたら、私が魔法でぶっ飛ばす」
「いや。それたぶん、もっと危険よ」リアが呆れてため息をついた。
『それより、歩いているところが崩れそうになったら、ワタクシの力で一時的にその崩壊を食い止める方が安全じゃないですか?』と、ピエール33世は言った。
「ウラヌスでやってたみたいに?」
『ええ。みなさんが安全なところまで避難するまでなら、そんなに魔力を消費しませんし』
「それでさ、」レイに手を触れられて復活したテンが、ようやくみんなの皿に鍋の中身を分けながら言った。「たぶんそれ、夜の間にやるといいと思うんだ」
「何で?」
「その子どもたち、本当の真夜中に肝試しやってるみたいなんだ」
「昼間に『氷が張る』とか『音が鳴る』って話はないようだから、その『貴公子』は夜にしかいないのかもしれない」
――考えてみれば、モデルである彼は昼間は忙しいだろうから、仮説が正しければ、城には夜間しかいないはずだ。
「……ま、もしスカーレットじゃなくてモンスターだったら、退治すればいいだけの話だし」
「とりあえず、行ってみるか!今日これから!」
俺がそう言うと、リアがじっとこちらに目線を向けた。
「……レオが帰ってくるまで待たないの?」
「ソラが帰って来る前に、1回調査に行こう。人間がいるのか、モンスターがいるのかで対応が違ってくるだろうし」
「城の崩れ具合も確認しないとね」
テンがそう言うとリアも納得したようで、「それもそうね」と言った。




