182話 6月5日#02
ということで、今度は城の近くの道を歩いてみた。
すると、向こうからレイとテンがやってくるのが見えた。やっぱりちゃんと手を繋いでいる。
「お前らもここにいたのか」
「奇遇だね」テンは、レイの手を持っていない方の手を振って、ニコニコ笑った。「なんでここにいるのー?」
「スカーレット様が、もしかしたら城の近くに住んでいるのかもしれないの♪」と、リアが報告した。
「テンたちは?」
「うんとね、ガイドブックにあった『幽霊が出る穴場スポット』に行ってみたんだけどね」
――何、変なところへ行ってんだ。
「そこで遊んでいる悪ガキたちが教えてくれたんだけど、城に誰かが住んでるみたいだよ」
「……どゆこと?」
「『誰か』というか、『何か』って感じかもしれない」と、レイは言った。「たまに、夏でも城の床に氷が張っていたり、何か変な音が響き渡ったりしているらしい」
「それで、子どもたちの間で『幽霊かモンスターが城に住み着いている』て噂が立っているようで、肝試しに使っているらしいよ」
――なかなかスリリングな肝試しだ。
「『音』はともかく、『夏でも氷が張ってる』って、どういうことよ?」リアが首を傾げた。
「確かに、僕もわからない」とテンは首を振った。「魔法で凍らせることはできるけど、やっぱり夏は難易度が高くて、普通にやってもうまく氷にならないんだ」
『ということは、本当にモンスターがいるのかもしれませんね』と、ピエール33世は言った。『モンスターの中には、それこそ1つの城全体を凍らせるまで冷却できるやつがいますから』
「星霊使いもできるかもな。『魔法のバケモノ』みたいな奴らだし」
『どうですかね?』ピエール33世は緑色の光を点滅させた。『少なくともワタクシの記憶の中では、さそり座の星霊使いさんは『石化』の魔法の使い手なんですけど』
「『石化』って何?」テンは首を傾げた。
『あー。あんまり聞きませんよね』ピエール33世は、紫色に光った。『えーっとですね。まあ……『石化』すると、自分では動けなくなるんですよね』
「それは『自分の意思がなくなる』ってこと?」
テンが訊ねると、ピエール33世は『ちょっと違いますね』と答えた。
『ちゃんと起きてますし、意思もちゃんと持っているんですが、体を自由に動かすことができなくなるんです』
「つまり、『金縛り』状態ってことかしら?」
『まあ、ここで終わるならそうなんですが』
そして、ピエール33世のトーンが一段階下がった。
『実は『石化』では、動けなくなったあとで少しずつ、体の末端から、石みたいに固くなって本当に動かなくなるんです。だんだん皮膚が固くなって、関節も動かなくなります。最後は、臓器……心臓も動かなくなっちゃいます』
それを聞いた俺たちは、互いに顔を見合わせた。
「何か毎回思うけど、星霊使いの能力って、すごすぎて怖いよな」
「そうだね」テンは、眉間にしわを寄せた。「それって、本人が起きている間に進行するんだよね?」
『そういうことです』
「やだー!マジでひどい能力ね!」
リアは、頬に両手を当てて叫んだ。
『実は、初代の星霊使いの中で、スコルピウスさんはアリエスさんの次に強い方でした』
「ちなみに、その『アリエスさん』は、『石化』に対抗できたの?」
『ええ。お二人が戦ったことがあるんですが、アリエスさんは強力な火の魔法をバンバン放って、『石化』される前にスコルピウスさんをねじ伏せていました』
――今のレイと、全く同じだな。
『ですので、スコルピウスさんと接触するときは、気をつけてください。その人が敵にしろ味方にしろ、怒らせるととんでもないことになりますから』
確かに、これは警戒して近づいた方がいいだろうな。




