179話 6月4日#03
俺たちは、たまたま見つけたカフェで昼食をとった。
「いや〜、やっぱりイケメン見ながら食事するの、最高よね〜!眼福、眼福♪」
リアはそう言いながら、昨日の雑誌|(を魔法で小さくしたもの)を見ていた。
「……何見てるの?」テンは首を傾げた。
「ほら見て!最高の美男子、スカーレット・シャウラ様!」
「んん〜?」
テンは、指の関節ほどの小さな雑誌としばらくにらめっこした後、上着のポケットから虫眼鏡を取り出して|(また変なものを持ち歩いてる……)、紙面を拡大して観察し始めた。
「確かに……かっこいい、かも?僕の方がずっとイケメンだけど……」
「そうね♪テンには、顔以外にもいっぱい魅力が詰まってるし♡」
「……そりゃ、どうも」
すると、珍しくレイが、こういう話に参加してきた。
「もしかして、あの人のことか?」
「……ん?」
レイが指していたのは、店の壁に書かれた有名人のサイン。一番俺たちの席の近くのサインは、『スカーレット・シャウラ』と書かれていた。
「そうよ!スカーレット様のサインだわ!」
「何でこんなところに?」
何となく気になったので、タイミングを見計らって、店の従業員に訊いてみた。
「ああ。彼は小さい頃このあたりに住んでいたそうですよ。最近この街に戻ってきたみたいで、この店のことを、よく覚えていらっしゃいました。最後に来た時は、本当に幼い頃だったはずなんですが……実にありがたいことです」
『「「「「………………」」」」』
俺たちは従業員にお礼を言った後、しばらく考え込んだ。
「スカーレット様、この街の出身なのね」と、リアがつぶやいた。
「……てことは、今もこの街のどこかにいるってこと?」テンは、店内をキョロキョロ見渡した。おそらくこの店にはいないと思うが……
「最近考えすぎかなーって思うんだが」と、俺は思いついたことを言った。「そのスカーレットが『スコルピウス』ってことはないよな?」
「あり得るんじゃないか?」と、レイは頷いた。「『小さい頃』と『最近』ここに住んでいるんだろ?その間の期間は『修行』していたのかもしれない」
「や、やだあ〜♪」リアは首を振った。「考えすぎよ♪……あ、でも!」
リアはテーブルの上で立ち上がった。
「この街を歩いてたら、どこかで出会えるのかもしれないのね♡ナマで顔を拝見できるなんて、こんなにステキなこと、他にはないわ〜♡♡」
リアのテンションが爆上がりした後、俺たちは店を出た。
「……さて、どうしようか」
『毎回思っていますが、大変な難問を投げつけてしまっていて申し訳ありません』
ピエール33世が紫の光を出しているので、俺はこう言った。
「……でも、毎回運良く見つけられるのって、もしかしたらピエール33世が神様だからかもしれないな」
「神様だから、運がいい?」
『きっと、そうですよ!』
――急に元気になった。
「じゃあ、今回も『数撃ちゃ当たる』で!さっそく『スカーレット・シャウラ』を探しに行こう!」
「おー!」と、言いそうになって、俺はテンの方を見て眉をひそめた。「……何で?」
「え?」テンはニコッと笑った。「だって、『数撃ちゃ当たる』ってことは、少しでも『そうかもしれない』人を、片っ端から探していくってことでしょ?」
「……そうね♪」リアは頷いた。「しかも、目標人物はあのスカーレット様だもの、ワクワクしちゃうわ〜♪ね、アリエス?」
「え?うーん……?」レイは首を傾げた。
「レイさんは、僕がいつもワクワクさせてるから、そんな男には興味ないよ。ね?」
「……うーん?」
レイは、あまり意味がわかってないようだった。
――思えば、レイだけあの写真見てないじゃないか。わかるわけないだろうな。




