177話 6月3日#05−6月4日#01
その日の夜。
俺たちは宿で、本屋でそれぞれが選んだ本を読んでいた。
「あー、やっぱりわかんねえ……」俺ははあとため息をついた。「石の力で魔法陣に書いてある文章は読めるんだが、それがどうしてそういう魔法になるのか、全然わからん」
「……君、困ってるみたいだね」テンが俺のベッドに近づいてきた。「簡単に僕が教えてあげようか?……『情報料』アリで!」
「いや、『情報料』取るのかよ……」俺は話を聞き流そうとした。
――しかし、ふと考えを改めた。
「『情報料』って、具体的に何?」
「レイさんをすっぱり諦めて、僕に彼氏の座を譲ってくれること!」
「……意味不明なんだけど」
――そもそも付き合ってねえし。
「何で?」
「別に、お前がレイとどんな関係になろうが、俺には関係ねえってことだよ!」
「……気にならないの?」
「全然」
「本当に?」
「……本当だよ!」
――なぜ、それを疑う?
「でも君、一番長くレイさんと一緒にいるんだよね?どうして?」
「『どうして』もこうしても、最初は俺の家に、向こうから押しかけてきたし……」
その時、テンの顔が凍った。
「あ、やばっ」俺は思わず声を出した。
「……なるほど」テンは立ち上がった。「どうりで僕になびかないと……」
「いやいや!なびかないのはレイが鈍感なせいだって!」
「やっぱり『情報料』の話、ナシね」
「お前、変な勘違いしすぎ!」
――お願いだから、レイ、早くテンの気持ちに気づいてあげて!
翌日。
ソラは、他のメンバーと向かい合って言った。
「じゃあ、『アポロ』に行ってくる……すぐ戻ってくるから……!」
「おう!気をつけてな!」
俺たちは、ソラが城門を抜けて、姿が見えなくなるまで見送った。
「……さて、どうするか……」
『やっぱり一番気になるのは、あそこにある城でしょうか?』
ピエール33世は、街のどこからでもよく見える白亜の城の方にカメラを向けた。
「じゃ、行ってみるか」
――ところが、城のすぐ近くまで行くと、1人の年老いた男性に声をかけられた。
「君たち、旅行者かね?」
「はい、そうですけど」
俺が頷くと、男性は首を振った。
「この先へは行かない方がいい」
「どうしてですか?」
「あの城……最近崩れ始めているんだ。近づくと危険だよ」
「観光ガイドブックには、観光名所だと書いてありましたが……」
「……数年前まではな。だが、あの城は古いし、以前からあんまりよくは手入れされていなかったからな。今じゃ、誰も近づかない『名所』になっている」
男性は、もう一度首を振った。
「とにかく、近づかないことをお勧めするよ」
「そうなのか……」
この後も数人の地元の人に会って話を聞いたが、全員が「城へ近づくのは危険だ」と言って、首を振った。俺たち6人は話し合いをした後、元来た道を引き返すことにした。
「うーん、」俺は、ソラから借りたガイドブックを眺めながら唸った。「どうしよう?」
「ねえ。『石』って、隕石みたいな感じで地上に落下したでしょ?」
俺は、肩の上のリアの方を見た。
「そうだが?」
「『天文台』なら『石』について何か知ってるんじゃない?ほらここ、結構高いところにあるから、きっとどこかにあると思うんだけど」
「あー、確かにあるな」俺は、ガイドブックの地図の道と実際の道を照らし合わせた。「あっちの方だな。行ってみる?」
「………………」
――返事がない。
「ん?」
俺が後ろを振り返ると、ピエール33世のカメラが目と鼻の先にあった。
『……あんまり見ない方がいいですよ』
「うわっ!」俺はちょっとびっくりした。「……え?何で?」
「アリエスとテンが、あんたのこと話しているみたい」
リアは、俺の肩からピエール33世の上へと乗り移り、じーっと2人がいそうなところを見つめている。
「何で2人が俺の話を……?」
「あー。これ、あんたが介入すると、収拾つかなくなるやつよ」
「ますます気になる……」
『ダメです!ここはスルーしてください!』
「あー、そーですか……」
昨日のこともあるし、レイがヘンなことを言っていないか、ちょっと心配だった。




