174話 6月3日#02
空は明るくなり、ピエール号は順調に目的地へと向かっていた。
「やっぱり、日中はモンスターがほとんど出てこなくて、ホント楽だわ」
俺は、折りたたみの椅子を甲板に持ってきて、それに座って空を見上げていた。
「そうね」いつものように俺の肩にいるリアが言った。「だいぶ暑くなってきたし、モンスターもなかなか日陰から出て来られないんじゃないかしら?」
「そうだな」
こういう乾燥地帯は、夏の間は暑くてカラカラで、野生の生物にとって厳しい環境になる。それは、モンスターも変わらない。
「もう『6月』か」俺は、水の入った水筒を手に取った。「これからどんどん、昼間が暑くなるな」
「そうねえ」リアが同意した。「そろそろ夏用の服を出さないと」
と、その時、
――ガンッ!!!
ピエール号が何かに当たり、船が大きく揺れた。
「……きゃ!」リアが悲鳴をあげた。
「どうした!?」完全に停止したピエール号に、俺は訊ねた。
『す、すみませ〜ん……』ピエール号は、悲しそうに言った。『地面にぶつかっちゃいました……ワタクシ、これ以上の高さまで上がれませ〜ん……』
「『上がれない』?」
『……簡単に言えば、『この先は歩き』です!』
どうやらここから先は、自分たちの足で行くしかないようだ。
俺はみんなに支度をするよう指示して、自分の荷物をまとめてピエール号から降りた。
それからの旅路は、結構ハードだった。
道が思ったより勾配が大きくて、歩いていると地味に体力を削られていく。
しかも強い日差しと乾燥。結構辛い。
「あー、疲れたー」
「……お前、ずっと宙に浮いてるだろ」
俺はレイを見た。幽霊みたいに、足をつけずにふよふよ移動している。
「それより、その格好暑くないのか?」
レイは、最近着てなかった赤マントを着用していた。
「あついのは慣れてるから、日差しを遮れればおーけー」
「……まあ、レイさんは『地獄の炎』に耐えられるもんね」テンは苦笑いしている。
俺は、ふと後ろを振り向いた。ソラがリアを肩に乗せ、黒い日傘を差している。
「……それは?」
「モルガンが置いていった……せっかくだから、使ってみた……」
――そういえば、モルガンとはきちんと別れられなかったからな。
いつか再会したら、日傘を返してあげないと。
「でも、こう日差しを遮るものが何もないと、精神的にもキツいよね」
テンは、モーニングコートを肩に掛けて歩いている――いや、邪魔だろ。
「あー……気づいてると思うけど、僕のコートは仕掛けがいろいろあるから、いざという時いつでも着られるように、いつも持ち歩いてるんだよー」
「……なるほど」
『一張羅だ』と言っていたのも、修理しながら長く愛着しているのも、そのあたりが理由なのかもしれない、と今更ながら気づいた。




