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月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
ケレス‐アトラス編

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169話 6月2日#02

 「でも、兵士たちの気を逸らせば、簡単に持ち物を奪い返せるんじゃないか?」



 レイが、そんなことを言い出した。



 「……どうやって?」



 いちおう訊ねると、レイは右の手でサムズアップしながら答えた。



 「燃やす」


 「……却下」


 「あ、ねえねえ♪」リアが、テーブルの上で、片足でくるんと回った。「それじゃ、兵士たちを色気で籠絡する♡っていうのはどうかしら?」


 「……それも却下」


 「えー!カイトもテンも、結構いけると思うんだけどなー♡女性の兵士に投げキッスをするとか♡」


 「ね、そうだよね!さすがリアちゃん、わかってるぅ〜!」


 「……何喜んでんだよ」



 俺ははあとため息をついた。



 「とにかく、俺たちは何も悪いことをしてないんだから、そうやって余計なことをするんじゃない!」


 「……えー!黙って見てろって言うのー?」


 「何もしないで結果を待つのが一番早いってことだ。眠気と空腹はどうにもならないけど」


 「……あたし、もう眠い……」ソラがうとうとしている。「とりあえず、寝たい……」



 それを見ていた俺も、まぶたが重くなってきた。



 「この旅、毎日のように何か起こるからな……俺も疲れた……」


 「私も、昨日魔法をバンバン使ったから……かなり疲れた……」


 「あたしも……」


 「僕も……」


 「「「「「………………」」」」」



 部屋に兵士がやってきて俺たちを呼ぼうとした時には、俺たち全員、折り重なるようにしてソファで眠っていた。






 その後、俺たちは兵士に叩き起こされ、軽食のサンドイッチをもらった。


 その時、取り調べの結果の説明を受けることになった。


 要約すると、俺たちと同時に連れてきたピース教団の幹部、レイラとピエールが、俺たちを襲ったことを認めたらしい。何人か捕まえることのできた『灰色マント』たちの証言からも裏付けできた。


 レイラとピエール、それとマーリンのそれぞれの能力についても聞くことができ、昨日実際に起きた出来事とも整合性がとれた。



 ――だから、何の罪のない俺たちが無罪放免、自由になれる!……と、簡単にはいかなかった。



 先ほど俺たちが眠っている間に、事件が起きたのだ。


 見張りの兵士が、ピース教団の奴らがいる部屋の中を覗くと、ひどく甘ったるいにおいがした。仲間の兵士を呼び、一緒に中へ入ると、1枚の紙が燃えていたらしい。


 そして、教団の奴らは全員倒れていた。医務室に運び込まれたが、全員意識がない状態だ。



 「君たちの中で、この紙が何かわかる人はいる?」



 兵士はそう言って、手に持ったトレイをテーブルに置いた。中には水と、水に浸った紫色の紙が入っていた。水はたぶん、においの発生を抑えるために入っているんだと思う。



 「……うーん」



 紙の表面に、魔法陣が描かれている。円の周囲に何か書いてある。



 ――我を脅かす裏切り者へ告ぐ……力を借り……永遠……へと誘(いざな)う……



 読めなかった。あちこち焦げていて、文章が途切れている。


 他のみんなの様子を見ても、みんな首を傾げたり振ったりして、紙を見つめている。



 「俺たち全員わかりません」


 「……そう」兵士はトレイを取り上げた。「まあ、君たちは全員眠ってたし、状況的に教団の奴らが自分たちで何かしようとしたと考えるほうが自然だよね」



 それから、兵士はため息をついた。



 「君たちはもう外に出てもいいよ。預かった荷物は、そこの奥の部屋にあるからね」



 それだけ言って、兵士は部屋の外へ出ていった。


 兵士の姿が見えなくなってから、俺たちは静かにハイタッチして喜んだ。

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