168話 6月2日#01
「……捕まったわね」
「うん。捕まっちゃった」
あの後俺たちは、街なかをバラバラに走り回り、最後には多くの兵士に取り囲まれて全員捕まってしまった。
俺たちは誰も見ていなかったが、レイがマーリンを仕留めたらしい。『魔巧竜滅砲』を受けても死ななかった相手に、何やら新技を使って追い打ちをかけたようだ。
だが、兵士による「君は何者か?」的な質問に、堂々と俺たちの仲間だと宣言し、結局、現在俺たちと一緒に飛空軍艦の中にいる。
「……まあ、モルガンが無事ならそれでいいんだけど」
「でもねえ」テンは天井を見つめた。「一度も会ったことのない母親に突然会いに行って、そこで何かトラブルがあるかもしれないし」
「ドラゴンは、ドラゴン……親子の愛情があるかどうかは、不明……」
「そこら辺を含めて、うまくやってたらいいな」
俺たちはぼけーっと、思い思いの方向を見つめていた。全員この部屋から出られないし、何より手持ち無沙汰で眠くて腹が減った。
「そういえば僕たち、昨日の晩ごはん食べ損ねてない?」
「……だからか」俺はあくびをした。「寝不足で空腹……最悪だ……」
「……そういえば、アリエスやレオは何か食べ物持ってないの?」
「うーん……」レイは唸った。「食べ物入れると、すぐ存在を忘れて賞味期限が切れるから、食べ物以外のものしか入れてない」
「……私、体型維持するために、間食は食べないようにしている……」
「……今度から、全員が食料を少しずつ携帯しておこう。こういう時のために」
――そういえば、夜の間に星霊使いの3人の持ち物のことで一悶着があった。
レイは検問の時と同じく、大きくて重い大剣と、10万冊の本が問題になった。他にも持ち物はあるが、いろんな物があちこちバラバラに入っていて、1つひとつ検査してたらきりがない。
一方リアは、1万着のちっこい服と大量のちっこい化粧品、そしてちっこい弓矢を持っていた。俺の弓矢は機転を利かせて、小さくして服の山の中に隠したらしい。
――そしてソラ。
「ダンベルが1000個、バーベルが720個、サンドバッグが大小合わせて100個、ランニングマシーンが30台……などなど」
ゴーレムは言わずと知れた大きさだし、トレーニング用品の数も異常だった。
それを聞いたテンは、思わずといった感じでソラに訊ねた。
「ダンベルが1000個もあって、何に使うの?」
「ダンベル……集めてる……」と、ソラは言った。「大小いろんなのあるから……コレクション多い……」
――『ダンベル収集家』なんて、初めて聞いた。
ともかく、この3人の私物の量が常軌を逸しているため、兵士たちは完全に困ってしまった。
仕方なく兵士たちは、「取り調べ中は何も出すな」という条件で、3人の持ち物を取り上げるのを諦めた。
「おかげで『石』はまだ手元に残っているし、あとはカイトとテンの持ち物だけだな!」
俺とテンは、持っていた『てんびん座の石』と『みずがめ座の石』を、取り調べが始まる前にレイに預けたので、俺たちが持っている『石』は、まだ1つも取られていない。
しかし当然のことながら、俺とテンの武器と持ち物は検査されることになった。テンは、帽子も取り上げられた。
「……まあ、僕の持ち物はそんなに怪しいものは入ってないし、大丈夫だと思うけど」
――ホントかよ?
「……君は、『騎士』のライセンスを持ってるんだよね?剥奪されたら困るんじゃない?」
「んー」俺は、ソファの肘掛けに肘をついて考えた。「仕事の登録とかで手間取るとは思うけど、そこまで支障は……」
――そこで、思い出してしまった。
「……『スポンサー兼マネージャー』の嫌味がひどくなりそうだ」
「「「「あ〜〜〜」」」」全員の口から、納得したような声が漏れ出た。
この時にはもう、リアは手持ちのお茶菓子(祖父母からくすねたもの)を全て食べ尽くしていたみたいです。




