167話 6月1日#15〜マーリンの恨み〜
目が慣れると、自分に何が起きているのかわかった。
――光の球体――『光の檻』――の中に閉じ込められている。
「あ……まずい」
「……最初からこうすればよかった」
ドラゴンはぶつぶつ言いながら、私の横を通り抜けようとした。
私は、球体を指の関節で少し叩いてから、「あ」と、いいことを思いついた。
「『地獄炎』」
私の体が、黒っぽい色の炎に包まれる――もちろん、私の剣も。
その状態で、私は球体に剣を突き刺した。
――パリンッ!
球体は、簡単に割れた。
「……あ?」ドラゴンは、こちらを振り返った。
うーん……さっさとモルガン探してもよかったんじゃないかと思うんだけど、たぶん油断していたんだろうな。
私は、『インフェルノ』をまとった剣をドラゴンに向けて、「『クリムゾンブレス』」を放った。
一直線にドラゴンへ向かう赤い炎に、赤黒い炎がまとわりつき、一緒にまとめてドラゴンに食いついた。
火だるまになったドラゴンは、大きな叫び声をあげた。
「ギャアアアア!!!」
その間に私は回り込んで、またドラゴンの前へ立ちはだかった。
――あ。私の炎が、ドラゴンに吸い込まれて消えた。
「ガアアアアア!!」
ドラゴンが、私の炎を吐き出す。
「『インフェルノ』!」
私は、自分が『地獄の炎』に包まれるのも構わず『クリムゾンブレス』を放ち、また2つの魔法が融合した火炎をドラゴンに浴びせた。
「な、何……ギャアアアア!!!!」
「……叫び声が、うるさい」
私はだんだん嫌気がさしてきた。
「なぜ、俺より……お前、一体何なんだ!?」
しばらくしてドラゴンを包んでいた火が消えたのを見て、何となく興味のあることを質問してみた。ドラゴンの質問には答えなかった。
「ねえねえ。何で『ピース教団』なんかに入ったんだ?」
「……『インフェルノ』!」
「『イグニスフィア』……ねえ、何で?」
「ギャアアアア!!……お、お前の質問に答える義理はな……!」
「『クリムゾンピアシングブレス』」
「ギャアアアアアアア!!!」
私のブレス攻撃が翼の付け根に当たり、ドラゴンはバランスを崩し、地面へ落下した。その衝撃で体の棘がほとんど落ちて、もうトゲトゲなのは尻尾しかなかった。
ドラゴンは、下敷きにした建物の瓦礫を撒き散らしながら、私に向かって叫んだ。
「『レジェンダリ』だ!」声に、怒りと苦悩と恨みが含まれている。「奴らに、俺の一族はみんな殺された……!全員、奴らの手で、この世から消された……!俺は、奴らに復讐をする……今度こそ、奴らを、全員、この世から消して……『レジェンダリ』を超えて……俺の国、俺の世界を創造する!例え人間に力を貸しても……『レジェンダリ』だけは、この世から、完全に……!」
「『インフェルノ』」
「ギャアアアアァァァアアア!!!」
「お前のその恨みとモルガンは、関係ないだろ」
私が冷たく言い放つと、ドラゴンは「そうだ……モル……ガン……」と言いながら、よろよろと歩き始めた。
「モルガン……いた……待て!モ……ル…………ガン!!!」
「『魔巧竜滅砲』、発射!!」
海のある方から誰かが大きな声で号令するのが聞こえ、同時に魔力をまとった砲弾が飛んできて、満身創痍のドラゴンに当たった。瞬間、魔力は爆発し、ドラゴンの体に大きな穴を作った。
「ドギャアアアアアァァァ!!」
ずいぶん長く、叫び声を発していた。私は地上に降りて、ドラゴンの近くへ寄ってみた。
ドラゴンは、おそらくモルガンがいると思われる方向を向いて、叫んだ。
「ぽ、ポムドールに……行くのは……俺だああああ!!」
だが、それで力を使い果たしたようだ。息は荒く、それでも目はしっかりとモルガンを捉え、その姿は、開かれた金色の扉から漏れるまぶしい光に包まれた。
――私は、小さな声で魔法の名前をつぶやいた。
光が消えた時、ドラゴンは息を引き取っていた。私は、ドラゴンが助からないだろうと思ってたし、助かってほしくはなかった。
「……ま。悪い奴だし、モンスターであることは間違いないし、断罪されることはないはず……」
「……そこにいるのは、誰だ?」
誰かの声が、後ろから聞こえてきた。振り返ると、兵士が2人近づいてきた。すぐ後ろに、ドローン型のロボットを従えている。
「……ん?」
「あんた……こんなところで何やってるの?」
「ここは危ない。まだドラゴンが……」
たぶん、まだドラゴンの生死を知らないのだろう。
その時、ロボットの表面を赤い光が走った。兵士たちは、ロボットの方を振り向いた。
『怪しい者を全員捕まえマシた。剣士が1人、魔術師が1人、格闘家が1人、あと謎の小人が1人とロボットが1体……1人ずつ、船にて尋問を受けていマス』
んー……『小人』?それってリアのことかな?
思えば、
「『剣士』はカイト、『魔術師』はテン、『格闘家』はソラ……あと『ロボット』はピエール33世か……」
「ん?」兵士たちが振り返った。「今の奴らのこと、何か知っているのか?」
「おう!」私はサムズアップした。「みんな、私の仲間だ!!」
――そしてなぜか、私も飛空軍艦へ連れていかれた。




