166話 6月1日#14〜マーリンの怒り〜
「レイ。リア。あのトゲドラゴンを何とか止めてくれ」
カイトは確かにそう言った。だから私は、ドラゴンが人間の姿から本来の姿へ変身しきる前に、『炎の一撃』をドラゴンに向けて放った。
――けど、何かあんまり効かなかったらしい。何事もなく変身は完了した。
「邪魔するな、人間!」ドラゴンはしかめ面をして、翼を大きく広げた。
「……ずいぶん大きな体だが、飛べるのか?」
私はそう訊ねたが、ドラゴンは無視して空へと飛び出した。
でも、めちゃくちゃ遅い。私は飛んで行って、簡単にドラゴンの進路を防ぐことができた。
「邪魔だ!食われたいのか!?」
「何だっけ?レジェンダリから力を奪ったって聞いたけど、どうやったらそんなことができるんだ?」
ドラゴンは、私の質問を無視して、口を大きく開けた。
口から光線が放たれ、私の剣に注がれる。
「カウンター……」
私は、どんどん光線を吸収して肥大する火球を、相手にぶつけた。
「……『イグニスフィア』!!」
――たぶん、全く予想していなかったんじゃないかな?顔にまともに当たって、ドラゴンは危うく地面に落ちるところだった。
「まずい……」私はつぶやいた。「屋根に火が移った……」
「……お前、」ドラゴンは、怒って私を睨みつけた。「人間の癖に、俺と対等に戦えるとでも思っているのか?」
「うん」私はあっさり肯定した。
実際、私は自分が負ける要素は何もないと判断していた。相手がどんな魔法を使うか、大体予想できたから――あと、直感。
「……ただの人間の分際で、たった1人で俺に勝てるなんて……頭が高いぞ!」
「1人……ひとり?」
――そういえば、リアがいない。
「……ま、いっか」
その隙に、ドラゴンは私に噛みつこうとしてきた。私は『炎の刃』でドラゴンの口の中を斬ってやろう、と思ったら、
――『炎の刃』が、ドラゴンの口の中で消えた。
ドラゴンはすぐに口を閉じ、ニヤッと笑った。
――さっきから思ってるんだけど、このドラゴン、表情が人間並みに豊かだな。
「お返しだ!」
ドラゴンが口を大きく開けると、私の『炎の刃』が、その口からこちらへ飛んできた。私は斬り刻まれて……
「はあ……」
――ため息をついた。
「やっぱりこの魔法、当たると痛いな……」
無傷だけど痛いから、『フレアスラッシュ』は、あんまり好きじゃないんだ。
「………………」
ドラゴンは、固まって動かなかった。
「……あー……何か?」
「……『クリムゾンブレス』!」
ドラゴンは、今度は私の火炎放射技を、私に叩きつけた。
「………………」
ドラゴンは、じっと私を見つめた。私は、やっぱり無傷。
「……なんだ、コイツ……火が、効かないのか……?」
「そうだ」
ドラゴンは舌打ちをして、突然その場でぐるんと前後へ回転した。細くて鋭い棘が、頭の上に落ちてくる。
「痛い」
私は大剣で棘を受け止めたが、棘がいくつか折れて、その外側の2、3本が右腕に突き刺さった。
「……刺さったな?」
ドラゴンは、またニヤッと笑った。
「俺の尻尾の棘から『レジェンダリ』の毒が分泌されててな、それで……」
「『クリムゾンブレス』」
私は自分に、自分の魔法をかけた。
――やだなあ、熱いなあ……どうだろ、3000度以上なら、毒は蒸発するかなあ?
「お、お前……!!」ん?ドラゴンがうろたえて、後退している。
魔法が消えて、私はゆっくり冷めていった。でも、ドラゴンは近づいてこない。
「な、何なんだ、お前!?……熱にも強いのか……!」
「……『ミラージブラスト』!」
熱風がドラゴンを捕らえ、体の棘を撒き散らしながら吹き飛ばした。ドラゴンは「ギャアアアア!」と叫んで、暗い空のどこかへ飛ばされていった。
――と思ったら、1分くらいで戻ってきた。
「『クリムゾン……』」
何となくゆっくり言ってみたら、ドラゴンはすぐに反応した。
「『クリムゾンブレス』!」
「『……ピアシングブレス』!」
私の『クリムゾンピアシングブレス』は、ドラゴンの『クリムゾンブレス』より速くドラゴンへ到達し、ドラゴンの攻撃と頭の棘を粉砕した。
「……もしかして、」私は、ふとあることに気づいた。「私の魔法……食べてるのか?」
――たぶん、あのレジェンダリ『モルガン』は、魔法を食い尽くされてしまったのだろう。
ということは、食べられた魔法は返ってこない。食べられた分、魔力が消えてしまう。
「……こんの……人間が……!!!」
ドラゴンが、強い光を放った。
「『セイクリッドドラゴンシュライン』!!」
――あ。周りが明るすぎて何も見えないや。




