163話 6月1日#11
「……おい!モルガン、目を覚ましてくれ……!」
俺は、モルガンの頬をぺちぺち叩いた。
「早く目を覚まして!ポムドールはすぐそこよ!」
リアも、必死に声をかける。
その時、ようやくモルガンの意識が戻ってきたようだ。自力で動き出し、何か独り言をつぶやいている。
「おい、モルガン!俺の声が聞こえるか?」
「……うる、さいな……」あ、目を開いた。「何を、そんなに……」
モルガンは口をつぐんだ。俺たちは、武器を持った兵士たちに囲まれていた。
「その女性は誰だ?君はその女性に、何していた?」
「……ただ、起こそうとしていただけです」――たぶん、信じてくれないだろうけど。
モルガンは体を起こし、ふらふらしながら立ち上がろうとした。
「大丈夫?動けるか?」
「いいから立ち上がって、手を挙げろ!」
――仕方なく、俺は言われたとおりに立ち上がって、手を頭の上に置いた。
すると、1人の兵士がモルガンに近づいた。
「君は、こっちに来て……」
「触るな、貴様!」
モルガンに抵抗され、兵士は後ろに下がった。
「……ねえ、どうする?」テンが小さな声で話しかけてきた。
「俺たちはともかく、モルガンが捕まって正体がバレたら、確実に殺される」
――それに、目的地はすぐそこなのだ。
「そうだねー『レジェンダリ』だもんねー」テンも同じことを考えているようだ。「彼女だけでも、逃さないとね」
兵士たちが、モルガンの周りにも集まってきた。
俺は、モルガンに向かってこう言った。
「ポムドールへ行け。あとは俺たちが何とかする」
モルガンは、何か言いたそうな顔をしていた。しかし最後は素直に頷くと、地面を力強く蹴り、あたりを包み込む星空の中へと飛んでいった。
そして予想どおり、軍が動いた。
「空を飛んだ……人間じゃないな!」
「モンスターか!?」
「……撃ち落とせ!!!」
「……ソラ!」
「わかった……2重『パワーガード』!」
ソラの魔法盾が兵士とモルガンの間に現れ、兵士の放った銃弾をすべて弾き返した。
そして別のシールドが、俺たちの周りを覆っていた。銃弾は2つのシールドに挟まれ弾かれて往復し、兵士たちの体を次々に撃ち抜いた。兵士たちは痛みに耐えかねて、騒ぎ始めた。
「全員バラバラに逃げろ!敵を撹乱するんだ!」
「「「了解!!!」」」
ソラとテンが、呻いている兵士たちの合間を縫って、違う方向に向かって走り出した。
『みなさ〜ん!ワタクシが役立たずでごめんなさ〜い!』
最後に、ピエール33世がそう言いながら、リアを乗せてどこかへ飛んでいった。
それを確認した俺は、くるりと後ろを振り向いた。
「君たちは、あの『モンスター』の味方なのかね?」
たぶん指揮官と思われる兵士が、そう訊ねてきた。
「ああ、そうだ!」俺は鞘から剣を抜いた。「俺たちの大事な仲間だ!」
再び銃撃が始まる。俺は剣をかざして銃弾を吸収させ、防いだ。
――その時、明るい光があたりを照らしだした。まるで昼間のように、明るい。
ひどく眩しいが、兵士たちの銃撃が止んだ。
俺は剣をしまって、その場から逃げ出した。




