162話 6月1日#10
リアが放った矢は、空中で大量の矢に分かれて、灰色マントの集団に降り注いだ。
灰色マントは一気に混乱の渦に陥った。リアの小さな矢は、確かに致命傷にはならないが、それでも複数刺さるとかなり痛い。
「ひいいいい!!」ピエールも矢に刺されて、痛くて飛び上がっている。
一方、ソラとテンとモルガンの3人は、ソラの『パワーガード』に守られて無事だった。
「3人とも、無事か!?」
俺は屋根から飛び降りながら言った。
「あたしの矢、すごいでしょ♡」俺の肩の上にいるリアは、得意げになっている。「敵が大量にいる時は、このリアに、お・ま・か・せ♡」
やがて灰色マントたちは立ち直り、俺たちの方を向いたが、
「下がるんだ」俺は、持っていた弓に矢をつがえた。「さっきのと同じ魔法を、この矢にかけてもいいんだぞ?」
――脅したら、素直に後ろへ下がった。
そういえば、弓矢は銃より魔法の恩恵を受けられるんだよな。矢を複数飛ばせるし、遠距離魔法と組み合わせると、破壊力抜群だ。
「さすが!2人とも頼りになる〜!」テンがニコニコしている。
右肩から出血した痕があるが、本人は気にしていないようだ――たぶん、『みずがめ座の石』の力で治癒したんだろう。
「とにかく、逃げるぞ!」俺は近くにいた灰色マントを突き飛ばした。「ソラ!モルガンを運べるか!?」
「うん、任せて……!」
「2人ともこっちに!」逃げ道を作った俺は、2人を誘導した。「あと、リア!もう1回よろしく!」
「おーけー♪」リアがそう言って、矢をつがえた。「今度はもっと痛いのをお見舞いしてあげる♪」
「あ、後を追え!」
ピエールは叫んだが、一歩遅かった。
「『サンダーショット:ミレ』!!」
さっきと同じように矢が多数飛んでいったが、今度は矢が刺さった部分に、雷が落ちた――何だか外から見ると、網の目のように絡まった雷が、灰色マントたちを一網打尽にしたかのようだった。
「やっほー!またね♡」
リアがそう言い残すと、俺たちは海の方へと走り始めた。
そして海へ着く前に、かなりの数の兵士を乗せた飛空軍艦を見かけた。街を半壊させているドラゴンに『魔巧竜滅砲』という兵器を撃つ準備をしているようだ。その兵器は、写真だけ見たことがある。
「レイさん大丈夫かなあ……?」テンが心配そうに言った。
「……まあ、大丈夫だろ。危なそうなら、すぐ身を引くと思うし」
それより心配なのはモルガンだ。よほどのダメージを受けたのか、なかなか目を覚まさない。
その時、飛空軍艦からの強い光が俺たちに当たった。見つかってしまったらしい。
「そこの君たち!何者だ!?」
飛空軍艦から降りていた兵士が、歩いてこちらに近づいてきた。
「あ!僕たち別に怪しいものじゃないです!」
テンはそういったものの、兵士たちがどんどん増えて、揃って近づいてくる。
「街をこんなに破壊したのは君たちか!?」
――7、8割違います。俺たち、正当防衛しただけです。
そう言いたかったけど、そう言えそうな雰囲気ではなかった。
「教団と何か繋がりがあるのか?」
「いえ、そんな!僕たちただ……!」




