157話 6月1日#05
「ピエール33世、一体何の話だ?」
『そう言われましても……』ピエール33世は紫色に光った。『ワタクシの『脳内データ』には情報が……』
「あー、そっか!」レイラは嬉しそうに言った。「『ウグイロン』をどうやって召喚するのか、この国の人たちは知らないのか!」
俺はレイラの服装をじっと見つめた。前も思ったが、全く見たことのないタイトなドレスだ。
「何か変な服着てると思ったら……外国人なのか」
「『変な服』はないだろ、失礼な!」
レイラが初めてイラついた。もしかしたら、服装にこだわりがあるのかもしれない。
「詳細は教えねえが、召喚するには私が必要だ。どうだ、すごいだろ!」
「……あ、ああ……」
――この人、思ってたより頭悪いのか?
レイラを抑えれば、『ウグイロン』関係の問題を全て解決できるということじゃないか!
「さてと、茶番はここまでにして」レイラは剣を構えた。「あんたを『ゾンビ』の仲間にしてあげる」
「……やれるもんなら、やってみろ!」
レイラが俺に向かって走ってくる。
俺はギリギリまで引きつけてから、さっとかわした。
――レイラは2本の剣を、動物の牙のように地面に突き刺していた。
「あー。そうやれば『ゾンビ』にできるのか」
「……え」レイラがしまったという顔をしていた――焦ると顔に表情が出るタイプらしい。
「街の人が『ゾンビ』になるのは……地面の下に『ウグイロン』がいるから?」
「……あんた、思ったより頭が回るね!?」
レイラは地面から剣を引っこ抜くと、呪文の詠唱を始めた。
「『暗黒の覇者の黒い風よ、彼を塵となしこの世から消し去れ』!」
呪文の内容から、『ウグイロン』が使っていたブレスを使う気だとわかった。俺は地面に伏せ、魔法陣から噴き出したブレスが頭上を通り抜けるのを待った。
しかし立ち上がる前に、レイラは剣を振りかざしてこちらに迫ってきた。
俺は自分の剣の切っ先を、レイラの顔を狙って突き出した。
「うわ!危な!」レイラは後ろへ避けたが、たたらを踏んでいた。「目に当たったらどうすんだ!」
「……知るか」
俺が立ち上がるのと同時に、レイラは両腕の剣を素早く振って、俺に攻撃を畳み掛けてきた。俺は、冷静に一つひとつの攻撃をかわし、防ぎ、いなしながら、反撃のチャンスを待った。
「……てりゃあ!!」
レイラは焦ったのか、2本の剣を持ち替えて、俺の頭上から再び剣を下ろしてきた。俺はすぐに、自分の頭の上に剣をかざした。
俺の剣が魔法陣を出して、レイラの剣をしっかりと受け止めた。
「……な!」
レイラはだいぶ驚いていた――そしてその隙に、俺は左手で渾身のストレートをレイラの頬に殴りつけた。
レイラは2本の剣を取り落とし、その場に座り込んでしまった。
「ひ……ひはい……」レイラは頬に手を当てた。「な、なひ……ほ、お、女の子の頬を本気で殴るなんて……」
「……お前の両手を切り落としてもいいんだぞ?」
俺が睨みつけると、途端にレイラは泣き出した。
「な、何この人……女の子に、優しさの欠片もないじゃない!……非常識すぎる!こんな暴力男、私今まで見たこと……」
「……は?お前、自分が今まで何やってたと思ってるんだよ?泣いて許されるなんて思うなよ!」
「ひどい……こんなひどいことする人だなんて報告書に……ヒッ!!!」
俺はレイラの後ろへ周り、首を絞めて気絶させた。死んでないことを確かめると、レイラを肩に担いで、元来た道を引き返した。
『す、すごいですね……カイトさん、意外とやりますね!』
「……俺を何だと思ってるんだ?」
『いやー……でも、女性でも敵には容赦しないんだなーっと……』
「俺、女相手に戦うことも珍しくない仕事してるからな」
その後すぐに、俺は数人の警官に出会った。騒ぎを聞きつけて駆けつけたものの、住民たちが『ゾンビ』になっていたので、対応に苦慮していたようだ。
「犯人はこの人です。ピース教団の人です。後はよろしくお願いします」
俺はそれだけ言ってレイラを引き渡し、警官が止めるのを無視して駆け出していった。




