155話 6月1日#03
俺たちは、花火の上がっている方向へ走っていた。
そちらへ近づいていくと、ある奇妙な点があることに気づいた。
「人がいねえ……」
「けど、遠くにたくさん人がいるのが見えるよ」レイは、俺の隣を飛びながら言った。
『どういうことなんでしょう?』
「もしかして、このあたりの人が集まっているのかしら……?」
俺たちは、曲がりくねった道を進みながら、他の3人を探し続けた。
そして、右へ曲がろうとしてはたと止まった。
確かに、人がたくさんいる。街の人だ。
みんなぼーっと突っ立って、俺たちの方を見ている。
そして、手にいろいろなものを持っていた。包丁とか、銃とか、ノコギリとか、あと厚い底の鍋とかも……
「何か、デジャヴを感じるんだけど」
「俺も同感」
そして、街の人たちが全員一緒に動き出す。こちらにゆっくりと近づいてくる。
「レイ、どこかに『ウグイロン』はいるか?」
「うーん。いないよ?」
レイは額に手を当てて、360度全てを見渡していた。
「え?じゃあこの人たち、どうやって元に戻すの?」
「仕方ねえ。この人たちを気絶させるか」
「……あ」
レイが何かに気づいたようで、俺はレイが見ている方を向いた。
その時、
――ズドーーーン!!
何か重いものが俺たちのそばに着地した。
「……ソラ?」
ソラの人型ロボットだった。
「街の人たち……また『ゾンビ』になってる……」
「気をつけて!」ゴーレムの手の上から、テンが下りてきた。「ピース教団の幹部が近くにいる!」
そのテンの言い方から、俺は幹部が1人出てくるんだと思った。
――まさか3人揃って、『ゾンビ』たちとは逆の方からやって来るとは思わなかった。
1人はピエール|(生きて、幹部に戻ってたんだ……)、別の1人はレイラ。ということは、誰かわからない3人目が『マーリン』ということなのだろう。
マーリンは、かなり――えっと――太っていた。筋肉がついてガッチリした感じではない。全体的にフォルムが丸くて、とてもではないがドラゴンに見えない。服装も、普通の人と同じようなシャツやジーンズを着ている。
俺たちが3人に気づいた時、『ゾンビ』の行進は止まった。レイラが前に出てきて、俺たちに話しかけてきた。
「あんたたちに1つだけ聞きたいことがある」レイラは俺たちを順番に見つめた。「……『レジェンダリ』はどこだ?」
――そういえば、モルガンが見当たらない。
ふとテンを見ると、ソラのゴーレムをちらっと見ていた。もしかしたら、ソラが機転を利かせて、モルガンをどこかへ逃がしたのかもしれない。
「隠しているなら、容赦はしないよ……忠告はしたからね?」
「あの女のニオイがさっき途切れたんだよな」やっぱりマーリンは、声も柔らかくて優しそうだ。「……あ。俺、気が短いから早く言えよ」
「『扉』にあの『鍵』が突き刺さったのなら、どこか近くにいるはずなんですけどね」
「それができるのは『レジェンダリ』だけだからね」レイラは、他の2人の幹部を見た。「いつまで待つ?」
「……見つけた」突然マーリンが動き出した。「『ダブルドラゴンレイディアンス』!」
マーリンは、俺たちの方ではなく夕日の方に向かって、モルガンが使っていた魔法を手の指から発射した。魔法の光はまっすぐ空を進み、何か空にあったものを撃ち落とした。
――正直、俺たちには動き出す時間もなかった。
「俺、奴を殺しに行くわ」
マーリンがそう言うと、その背中に翼が生えてきた。頭にはねじれた4本の角が生え、全身から棘が突き出てきた。
その変身の途中で、俺は横目でピエールとレイラが動き出す様子を捉えた。
「レイ。リア」俺は2人を呼んだ。「あのトゲドラゴンを何とか止めてくれ」
「「了解!」」
「ソラとテンはモルガンの様子を見に行け。俺とピエール33世で、他の2人の幹部を追いかける」
「うん」
「任せて!」
『了解です!』
俺は目の端で、飛び上がる前のマーリンに攻撃を仕掛けるレイとリアの様子を確認しながら、ピエールとレイラの2人が消えていった方へと走り始めた。
教団幹部のピエールは、『ウグイロン』が倒され正気に戻った後、教主に直談判をして、カイトたちを監視するという名目で幹部に返り咲いたようです。彼の能力は、相手に気づかれずに見張るのに適しています。




