148話 5月30日#03
「やあ、みんな!」
俺たちがリビングでくつろいでいると、テンがご機嫌な様子で入ってきた。
テンはくるっと回ると、自分の後ろを指さした。
「はい、朗報〜!」
「……鍵、完成した……」
テンの後ろにはソラが隠れていた。
「でかしたぞ!」
モルガンはそう言って、テンとソラに駆け寄った。俺たちもその後に続く。
そしてソラが手にしていたものは……
「……でかっ!」
長さ1メートルほどの大きな金属の鍵だった。
「……うん……」ソラは頷いた。「……重い……」
「え?待って?あの小さい欠片、そんなに数入ってた?」
「それがね、入ってたんだよ」テンは封筒の中を見せてきた。「何と!封筒の中に『収納魔法』が施されててね!」
そしてテンは、手を封筒の中へ突っ込んだ……あれ?肘くらいまで入る。
「……『収納魔法』?何だそれは?」
モルガンが眉をひそめているので、リアが説明した。
「人間の『生活の知恵』よ♪専用の魔巧機械を、入れ物に嵌めるの♪」
「あ!ちなみに僕の帽子にも装着してあるよ!」テンはそう言って、帽子を手でくるくる回した。
「……妙なことを考えるものだな、人間は」
「まあ、否定しないが」俺は肩をすくめた。
「しかし『魔巧機械』とやらは、そんなに有用なものなのか?」
「ええ、便利よ♪」リアはモルガンに説明した。「あなたたちドラゴンもそうだろうけど、あたしたち人間も、ほとんど戦いにしか魔法は使えないの♪だから、魔法の代わりに生活に使える『魔巧機械』はすごいものなのよ♡」
「そうだな」俺はキッチンの方を指さした。「この前『自動水生成機』買ったけど、あれも魔術師の出す水があんまり飲めたものじゃないから開発されたものだし」
「まあ、ひとことで言うなら『不味い』ってことね♪」
「……人間は、わがままだな」
「ま、そうかもね!」テンはくすっと笑った。「でもそれが、技術の進歩に繋がるんだよね!」
「ふむ……そうか」
モルガンはそう言いながら、不思議そうに封筒の中へ手を突っ込んでいる。
一方、ソラはとことことこちらへやって来て、鍵を見せた。
「これ、誰が持ってる……?」
「……そうだな、」俺はソラを見た。「ソラが一番適任だと思う」
「そう……」
「ところで、ソラは『星霊使い専用の収納』に何入れてるんだ?」
「……トレーニングに使うやつ……」
「『トレーニング』?」
「『サンドバッグ』とか……『ランニングマシーン』とか……『ベンチプレス』とか……」
「……それ、俺も見たい!欲しい!使いたい!!」
俺は、小躍りしそうなほど喜んだ。
「……そ、そう?……」
「おうおう!今度見せてくれ!!」
「いいけど……何でそんなに喜ぶ……?」
「だって他の奴ら、俺を『脳筋』とか呼ぶんだぜ?トレーニングして、何が悪いってんだ!」
俺は拳を突き上げた。
「よし!これからは堂々とトレーニングできる!ソラの道具借りて!」
「……『借りる』?いいけど……」
「やー、仲間がいてよかったー!『筋肉仲間』が!」
「……き、筋肉……」
「……『脳筋』が、意外な人と意気投合してるわよ」
「まあ、あれだけの力と体力があるんだから、ソラちゃんもそれなりに鍛えてるんだとは思ってたけど……」
「……何を喜んでいるのか、全くわからん」
リア、テン、モルガンは微妙な空気を漂わせていた。
そして、レイは……
「……zzzzz……」
――安定の、すやすやモードだった。




