144話 5月29日#03〜真夜中の騒動①〜
真夜中のこと。
みんなが寝静まり、しんと音がなかった船内で、
『うぎゃああああああああ!!!』
――突如、ピエール号の渾身の叫び声が響き渡った。
叩き起こされた俺は、靴を履くのもめんどくさくて裸足で部屋の外へ出た。
廊下に出ると、ひどく焦げ臭くて、俺は顔をしかめた。
「あっち……甲板の方……」
同じく廊下に出てきたソラが指さした方を向いて、何か嫌な予感がした。
甲板へ通じる扉を開け、俺が見たものは……
――真っ赤に燃え上がる炎だった。
「………………」
「れぇぇええええぇぇぇいいいい!!」
俺は反射的に、大きな声で叫んでいた。
数十分後、甲板全体を覆っていた火は完全に消し止められた。主に、テンの水の魔法が役に立った。
「大丈夫か、ピエール号……?」
『な、何とか……変身、解けなくて済みそうです……』
「おう、そうか。よかった……」
それから俺は、自分の前で正座して座っているレイとテンの方を見た。
「……で、何がどうなって、こうなった?」
俺のその言葉を聞いて、テンが口を開いた。
「えーっとね、あんまりレイさんを責めないでほし……」
「なぜこうなった!?」
「……ごめんなさい」レイは、自分が悪かったと、今回はちゃんと反省しているようだ。顔をうつむかせている。
「え、じゃ、じゃあ……」テンが、慌ててこう言った。「ぼ、僕から説明します!」
〜以下、テンの回想〜
僕はレイさんと一緒に、船長室から出られるベランダで夜風に当たっていた。周りは静かだし、レイさんと二人っきりだし、気分は最高!
さあ、レイさんとどんなお話しようかな……と考えていると、珍しくレイさんが僕に声をかけてきた。
「……テン」
「はいはーい!」やー、名前覚えてくれたんだ。嬉しいなー!
「……眠い。もう部屋に帰りたい」
「………………」
――いや、待って!もう少しここにいてよ!!
「……も、もうちょっとお話しない?」
「……話?」
「そうそう……あ、そうだ!」僕はレイさんの方を振り返った。「『おひつじ座の星霊使い』の修行って、どんな感じ?」
「……修行?」
「うん。まず、どんな事するの?」
「うーん……」レイさんは、眉間に手を当てて考え込んでいた。「そもそも始めたのが4歳くらいの時だから、よく覚えてないんだけど……あ、そういえば、」
「何なに?」
「もっと大きくなってから、その時の様子を聞いたことがあったな」
「それで?」
「確か……火傷せずに生きて帰れるようになるまで、アリエスの炎の中に放り込んで鍛えたとか」
「……ずいぶん過激なことをするね!?」
「それで、完全に火に慣れたら、次はもっと高温の炎で燃やして……」
「……次の段階があったんだ……」
「最終的に、『地獄の炎』に耐えられるまで鍛えたとか」
「………………」
――君なら、地獄へ行っても生き残れそうだね、レイさん。
〜次話に続く〜




