142話 5月29日#01
翌日、午前9時頃。
俺たちは飛空艇発着場の中にいた。
――何だかいろいろありすぎて忘れていたが、この街は今現在、『謎の巨大昆虫の怪物』に対する警戒を行っていた。
『思えばワタクシが地球に落ちてから、まだひと月も経ってませんからねー。そんなものですよねー』
本人はどこ吹く風である。
「とりあえず、ポートの使用の制限はされてなくてよかったね」テンは周囲を見渡した。
「俺たちがケレスを出る時も封鎖はしてなかったし、そんなものだとは思うが」
「……ところで、どうやって出発するつもりだ?」モルガンは腕を組んだ。「貴様ら、ちゃんと『飛空艇』とやらを持っているのか?」
「……あ。モルガンは知らないんだったな」俺はニヤッと笑った。「ちょっと見てなって」
ピエール33世は乗降場の空いている空間に飛び込み、いつもやっているように体を大きく膨らませて、いつもの飛空艇『ピエール号』に変身した。
「……な?すげえだろ?」
「確かに、かようなモノは見たことがないが……」モルガンは目を細めて俺を見た。「なぜ貴様が得意になってる?」
『カイトさんは、ときどき子どもっぽいところがありますからねー』
「うるせえな。みんな、さっさと乗るぞ!」
「おー」レイのやる気のない掛け声が聞こえてきた。
「お?レイさんが……」テンは拳を上に突き上げた。「じゃあ、僕も『おー』!」
「お、おー?」ソラがタイミングを見失いそうになっている。
「しょうがないわね♪あたしも『おー』!」リアが、他のメンバーに負けじと声を張り上げた。
「……やるならバラバラじゃなくて、全員一緒にやれよ」俺は、仕方なしに他のメンバーの元へと戻ってきた。「いいか?――みんな、行くぞ!」
『「「「「「おー!」」」」」』
「……我はやらないからな」モルガンは、そっぽを向きながらそう主張した。
――とはいえ、モルガンは空の旅を気に入ったようだ。自分専用の部屋を割り当てられただけでなく、居心地のいいリビングの椅子や、ピエール号が作る食事などを、モルガン本人が「及第点だな」とつぶやくくらいには評価してもらえた。
午後3時頃になり、テンはピエール号の進路の確認のため、船長室へと向かった。『プロセルピナ』という街まで、ひたすら森の上をまっすぐ進んでいく予定だった。
「2日……いや、状況によっては3日以上かかるかもしれない。野宿の時は、周囲の警戒を怠らないようにしないと」
こういう時、なぜかテンが頼りになる。もしかしたら、テンは昔、街を転々と移動した経験があるのかもしれない。
「……てか、みんなだらけすぎだろ」
リビングにいた俺は、みんなの様子を見ながらつぶやいた。
レイとリアは、完全に寝ている。ソラもうとうとしている。
モルガンに至っては「なぜ誰も我の世話をしない?」と、不遜な態度で脚を組み、ソファでふんぞり返っていた。
――まあ。これから見張り番というきつい仕事があるから、今は休ませたほうがいいか。
ちなみに、ウチは女性陣も強者揃いなので、見張り番は6人全員による交代制でやることに決まっている。
「ただなあ、」俺は頭を掻いた。「ちゃんと起きていてくれるのかなあ……特にレイ……」
ソファから転がり落ちながらも、まだぐーぐー眠っているレイを見ていると、俺は不安を拭いきれなかった。




