141話 5月28日#05
「えー?」リアは首を傾げた。「そのあたりにも人は住んでるんでしょ?モンスターが多いっていっても、行けないほどじゃないんじゃない?」
「このあたりでは普通、公共の『乗合飛空艇』で移動する……」ソラは説明を続けた。「単独で移動するのは危険……バスはモンスター退治の専門家が同行するから大丈夫……」
「ちなみに街は、どんなモンスター対策をしてるの……?」
「モンスターに対抗するのに、堅牢な城壁とバリアで囲んで……たくさんの兵士が配置されている……」
――うおっ。知らなかった。
「貴様、なぜそんなことを知っている?」
モルガンはソラを睨みつけた。
ソラは少し動揺したのか、いつもよりさらに小さな声でつぶやいた。
「あたしの故郷……このあたりに近いから、前に行ったことがあって……」
ソラの故郷は、そっち方面にあるのか。
「じゃあ、船で海路を行く?」
『定期船はあるでしょうけど、実は海もなかなか危険ですよ』と、ピエール33世は言った。
「『クラーケン』とか、『ヒュドラ』とか、『フォルネウス』とか、『ナイトコーラルドラゴン』とか……」
「……あー、わかったよ」モンスターの名前を列挙するソラを制した。「つまり、どっちにしろ覚悟して行かないといけないってことなんだな?」
『おっしゃるとおりです』ピエール33世は紫色に光った。『ワタクシに乗って行くか、海を船で進んでいくか。よーく考えて決めてくださいね……?』
「……じゃあ、ピエール号に乗って行こう」
『……決めるの早っ!』
俺たちは、全員レイの方を見た。
「だって、せっかく星霊使いが3人もいるのに、モンスターが怖いからって、回りくどいことする必要ないだろ」
「『レジェンダリ』も1人いる。我を忘れるな」
モルガンが横やりを入れた。
「さすが、レイさんだね」テンはくすっと笑った。「確かに、僕たちの中には既に『モンスター退治の専門家』がいるもんね」
「……まあ、それもそうだな」俺は地図に目を落とした。「ちなみに、ソラの故郷って、どのあたりにあるんだ?」
「このあたりの山の中……『アポロ』って、小さい村……」
問題になっている地域の南東の端にあるらしい。
「……じゃあ、どっちにしろこの地域を飛空艇で行く必要があるな」俺は腹を決めた。「まずは本当に『アトラス』へ行くかどうかを考えなきゃいけねえが、行こうが行くまいが『危険地帯』は通っていかざるを得ない」
「そうだね」テンもじーっと地図を見つめていた。「それに『アトラス』に関しても……『石集め』って観点でいえば、完全に寄り道になるけど、『ポムドール探し』って観点では進展ありそうだよね」
「ええ!間違いないわ♪」リアは、興奮気味に言った。「だって、『西端』にあるんだもの♡」
「……まとめると、」俺は全員の顔を見渡した。「ピエール号で『アトラス』にも『アポロ』にも行くってことで……反対意見はあるか?」
全員首を振った。
『えええ!』ピエール33世は、白とオレンジの光を交互に点滅させた。『みなさん、決めるのめっちゃ早いですね!?』
「というわけで……いざっ!『アトラス』へ出発!」
レイはまた謎の方角を指さして胸を張った。
「そっちは、東かな……」
――ともかく、今後の方向性は決まった。
その後俺たちは、具体的にどうやって街まで行くかを話し合い、夜11時頃にようやく床についた。
その、寝る直前のモルガンとテンの会話。
「……しかし、この『野菜男』。ずいぶん身長が高いんだな」
「え?や、やさ……?」
「身長どのくらいあるんだ?」
「182センチだけど……何で『野菜』?」
「今日そう呼ばれていたではないか」
「『野菜しか食べてなさそうな優男』のこと?……いや、あれは忘れてくれると嬉しいんだけど」
「貴様など、『野菜男』で十分だ」
「……思えば『優男』って、褒め言葉じゃなかったっけ?」
「だから、『野菜男』でいいのだ!」
「………………」
テンを高身長にしたのは、この場面での話題作りのためです。あまり深い意味はありません。




