139話 5月28日#03
俺は広場にあるベンチに座りながら、はあと息を吐いた。
「何か……すごーく強烈な人だったね」
「……初めて会った人にも、臆せず嫌味が言える……」
「あの鉄の心臓、あたしもほしいわ」
「あれって、いつものことなのか?」
レイが俺に訊ねるので、俺はまたはあとため息をついた。
「……いや。あれでも本気の3分の1も発揮してねえよ」俺は頭を抱えた。「本当に不機嫌な時のネチネチは、もう心にグサグサナイフをぶっ刺されて、心肺停止状態になるくらい……」
『あのカイトさんがそう言うなんて、よっぽどの人なんですねー……』
「それで、貴様が手に入れたそれは何だ?」
モルガンがそう言って、アーサー氏のくれた紙束を指さした。
「俺の次の試合の詳しい日程と、ルールや注意事項と、対戦相手の詳細情報……」
俺は途端に、うえっと声が出た。
「『魔術師カルネ』……よりによって、俺と同期のグラディアトル……」
「……何か、因縁を感じるわね」
「だけど、試合は6月29日だって。まだまだ時間があるよ」
テンが励まそうと、紙面を見ながらそう言った。
「それまでに、この旅は終わるのか……?」
『え!?』ピエール33世は白い光を放った。『まさかここで、カイトさんが脱退!?』
「まさか!」リアは俺の顔を見た。「試合の日が来るまで、家で寝てるつもりはないでしょ?あたしたちと一緒にいるほうが、よっぽどタメになるわ!」
「ああ、ああ。そのとおりだ」俺は頷いた。「別に途中で放棄するつもりはない」
――そう。俺はこんなところで立ち止まっちゃいけない!
「さっさと試合までに旅を終わらせて、ついでに魔術師対策もバッチリとれればいいんだよな?」
「意外とハードル高いね……」
「よしっ!」俺は立ち上がった。「そのくらい俺なら朝飯前だ!やってやる!」
「……あんたも、結構タフよね」
リアが呆れて肩をすくめた。
気を取り直して、俺たちは街の食堂で昼食を食べていた。
「……というわけで、金属の欠片の組み立て方は何となくわかってきたんだけど」
テンが説明をすると、ソラがそれに続けて言った。
「思ってたのより大きい……組み立てに時間がかかりそう……」
「え?どれくらい?」
「たぶん、2、3日くらい……」
「よし、じゃあ2人はその作業を続けてくれ」俺はピエール33世の方を向いた。
「今日は買い物をしたいんだが、一緒に来るか?」
『ええ、もちろん!同行します!』ピエール33世はオレンジ色に光った。
「じゃあ、私は寝てていい?」
「……却下」
レイのサボり癖に、俺はため息をついた。
「そうだな……今日はリアやモルガンと一緒に、自分の蔵書の中でも探してろ」
――ちなみに、昨日リアたちが図書館へ行った時は、神話について詳しく書かれた本は見つからなかった。
「アリエスが持ってる本?」モルガンは眉をひそめた。「一体何冊持ってるんだ?」
「……10万冊」
その事実を知らなかったメンバーが、揃ってぎょっと身を引いた。
図書館に『黄金の林檎』の神話について書かれた本はあったみたいですが、子ども向けの本であんまり詳しくは書かれていなかったそうです。




