135話 5月27日#01
翌日。
俺たちは指定されたとおり、午前10時頃にヴィクトリア駅にやって来た。
そこには既にソフィアがいて、俺たち|(リアとピエール33世を除く)に、1人1枚切符を渡した。
「君たちは素朴な感じが好きそうだし、一番安い3等の席にした」と、ソフィアは説明した。「午後早い時間に、ケレスへ着くはずだ。それまで、列車の旅を存分に楽しむといい」
『ソフィアさん。いろいろお世話になりました。ありがとうございます!』ピエール33世はピンク色に光った。『このご恩は、一生忘れません!』
「ああ、そうだな」俺はソフィアさんと握手をした。「本当に、ありがとうございました!」
「じゃ、また会えるといいわね♡」
「それまで、お元気で!」
「どーも、ありがとー」
「また……連絡するね……」
「……貴様ら、行くぞ」
「みんな、達者でな」
ソフィアはニコッと笑ってから、小さく手を振り、その場から去っていった。
いつも遠くから見ていた蒸気機関車が、目の前にある。
俺はそれだけで、何だかワクワクしていた。
「すげー!やっぱカッコいい!」
黒くてツヤツヤした先頭車両の煙突からは、シューッと蒸気が吹き出ている。
その様子を間近で見て、めっちゃ感動した。大きな車輪とか、鉄板どうしを繋げる鋲とか、細部までじっくり見ることができて、俺は1人ではしゃいでいた。
――何だろう。この重厚な感じに興味を惹かれる。
「お!」
その車両の中にいたおっさんが、こちらへ振り向いた。
「君は列車に乗るの、初めてかい?」
「はい!」俺は思わずにやけていた。
「すごいだろ!」おっさんはニカッと笑った。「この真っ黒な車体の姿をじっくり見てから、目的地までの車窓の風景でも楽しんでな!」
「はい!」
「……はーい!カイト君、こっち向いてー!」
なんだろうと振り向くと、テンが指で長方形を作っていた。
――つまり、写真を撮られていた。
「……やー!いい写真だねー!」
「え!?どんな?」
「教えないよー!」
テンは、俺の手の届かない高さまで、現像した写真を掲げていた。
『あ!なかなかいい写真じゃないですか!』ピエール33世が写真を覗いて、黄色く光った。
「いや!だからっ!俺に見せろよ!」
「やだよー!」
「ねえ、あんたたち、」リアがピエール33世に乗っていた。「そろそろ急がないと、列車に乗り遅れるわよ!」
どうやら女性陣は、既に列車に乗りこんでいたらしい。俺は、名残惜しく感じてもう一度先頭車両を見てから、3等車に向かって歩き出した。
俺たちが乗ったのは、一番安い車両のはずだったが、なかなか洒落た感じの木の座席が並んでいた。
クッションも程よく柔らかく、座り心地がいい。俺はテンの向かいに座ると、窓に近づいて外の様子を見た。
乗降場には、まだ人がたくさんいた。荷物を運んでいる人も、高貴な服に身を包んだ人も、車内の誰かと話をしている人もいた。
やがて時間になると、汽笛が鳴った。蒸気機関車が大きな低い音を立てて、ゆっくりと走り出した。
『おおー!』ピエール33世が嬉しそうにピンク色に光っていた。『これはなかなか面白い感覚……!』
「……だんだん速くなってく……」通路を隔てて隣の席に座っているソラが、窓の外を見ていた。「もう駅から離れた……」
俺は、窓の外を食い入るように見つめた。列車がどんどん速くなって、建物や木などが一瞬で後ろへと過ぎ去っていく。
「何かこういうの、やっぱワクワクするな!」
「僕も、そう思うね」テンは、目を細めて車窓を眺めていた。「君たちに会うまでは、こんな感覚なかったな……」
「……え?」
「あ、気にしないで」テンは目線を車内に向けた。「ところでレイさん、君は……」
――レイは、本を読んでいた。
「……安定してるな」
俺が苦笑いしていると、テンは帽子を脱いで、手でくるくる弄んだ。
「この気持ち……ホント、君たちと会うまで知らなかったな……」
テンは、嬉しそうに見えて、少し物悲しげな顔をしていた。
テンの過去に何かあったのだろうか?そんなことを思いながら、俺は窓の外の方にまた目を向けた。
テンとカイトは、身長差が10センチ弱あります。




