129話 5月25日#15
「……てゆうか、」リアが、コートに穴が開いて落ち込んでいるテンの頬を、ぺちぺち叩きながら言った。「モルガンって、何で『初代』のことを知ってるの?一体何歳?」
『ワタクシの予想では、400歳くらいですね』ピエール33世は、モルガンにカメラの焦点を当てていた。『レジェンダリとしては、かなりの若手です』
「400歳で若手……」
――まあ、ドラゴンだし、そういうものなんだろうな。
「初代のアリエスは、」モルガンは遠い目をしていた。「我が父を殺した……」
「へー」
「あの父に、ほとんど1人で立ち向かい、倒すなど……我には信じられなかった」
「へー」
『あ、もしかして、』ピエール33世がピコンと白く光った。『そのお父さん、レジェンダリのリーダー格だった人ですか?』
「……そうだ」
「へー」
「……レイ」俺が見かねて、レイに話しかけた。「モルガンはわりと重要な話してるんだから、もうちょっと関心を示したほうが……」
「別に、初代のアリエスなんて、興味ないもん」
レイは首を傾げていた。
「どうせ私とは血縁も何もない人だし……私とモルガンがどうするかとは、何も関係ないじゃん?」
「えっと、そうだけど……」
――やっぱり、モルガンが怖い顔でレイを睨みつけている。
「それより、私が勝ったんだし、鍵を渡してあげたら?」
レイはソフィアに向かってそう言った。
ソフィアは、ゆっくりと立ち上がった。
「……そうだな」ソフィアはそう言って、以前見せた封筒を取り出した。「これが鍵だ。使い方は、私に聞かないでくれ」
――ん?
モルガンが不審そうに封筒を開けると、中には金属の欠片みたいなのがいくつかと、何やらカードみたいなものが入っていた。
「……何だ、これは?」
「だから、私には聞かないでくれ」
モルガンの目が、すっと細くなった。
『……と、言われましても……ワタクシもよく存じ上げないので……』
あの後モルガンは、宿へ向かう俺たちの後ろをくっついて歩きながら、ピエール33世に詰問していた。
「貴様、『神』だと言ったな」モルガンは、ピエール33世を噛み砕きそうな勢いだ。「レジェンダリにとって代わった『神』が、なぜこの程度の知識すらないのだ?」
『……と、言われましても……』ピエール33世は、ほぼ同じことをずっと言っている。『その鍵を作ったのは、ワタクシたちではなく過去のレジェンダリさんたちなので……ワタクシからは何とも……』
「じゃあ、この紙切れは何だ?」モルガンはカードを突き出した。「我らレジェンダリは、このような人間の作るようなものを使うはずがない」
『……と、言われましても……』
「ねえ、ちょっと見せてくれない?」テンはそう言いながら、自分の長身を活かして勝手にモルガンからカードを取り上げた。「へー。これは……」
俺を含め、他のメンバーがテンの手元を見た。どう見ても、星座が描かれたカードにしか見えない。きらきらとした装飾が付いている紺色のカードで、古いけど結構きれいだった。
「『ヘルクレス座』か」レイは、興味深げにカードを眺めた。
「……『ヘルクレス座』?」俺は首を傾げた。
「昔の神話に出てくる英雄の名前が付いている星座だ。ヘルクレスは、何か知らんが12の難業を好き好んでやって、功名を立てた奴で……」
「……いや、あれ王様に命令されてやったんじゃなかったっけ……?」テンは苦笑いをした。
「何でもいい」モルガンはふんと鼻を鳴らした。「そんなもの、我らには全く関係がな……」
『そうでもないですねー』と、ピエール33世は口を挟んだ。『その『12の難業』のうちの1つが、『黄金の林檎』がある土地へ行って、『林檎』を取ってくるって話ですから』
「……何?」
『その神話でも、『黄金の林檎』はドラゴンに守られているんですよ〜』
「……何か似てるわね」リアはテンの肩にしがみついていた。「それ、何かのヒントなんじゃないの?」
「ヒント?」
――まあ、確かにその可能性はある。
「その神話について詳しく調べたら、何かがわかるかもしれないね」
「……貴様はその『神話』とやらの詳細を知らないのか?」
モルガンは、ピエール33世を睨みつけた。
『あー。実はですねー……』ピエール33世はピンク色に光った。『知りませんっ!ワタクシ、基本小説とマンガしか読まないのでっ!』
「使えない奴!」
「……てか、神様が『マンガ』を読むって……」
――ともかく、カードのある『意味』は、俺たちの手で探らないといけないようだ。
モルガン:ああ。我は父には会ったことがある。母についても、父から聞いた。父がアリエスに倒されたところを、直接見たわけではない。ただ、人間の街を歩いていたら、我と同じく人間に変身していたドラゴンと偶然に会って、そんな話を聞いた。その後約400年間、父らしきドラゴンとは会ってないので、嘘の情報ではないと思う。




