128話 5月25日#14
あたりが炎に包まれているため、レイのいる場所の様子はよく見えた。6本のハチェットが、地面に落ちている。レイの周りの植物が、全て燃え盛っている。
燃える羊の毛に守られているレイの様子を見て、ソフィアが動いた。驚くべき早さで成長する植物の葉に乗って、サーフィンのようにこっちへ向かって来る。
「『クリムゾンブレス』!」
「『リーフシールド』!」
レイの安定のブレス攻撃に、ソフィアは葉のシールドで迎え撃った。葉は燃えてしまったが、ソフィア自身は無事だった。
「……あー」レイはぽりぽり頭を掻いた。「やっぱり、ハチェット取り返しに来た感じ?」
「…………」
ソフィアは、黙ってハチェットに近づこうとした。
だが、レイの燃える羊の毛に邪魔されて、全く手が届かない。
「……チッ!」ソフィアはレイの方を振り返った。「『アイヴィクラッシュ』!」
植物の蔓がお互いに絡み合い、1つの大きな鞭となってレイに振り下ろされる。素早くて、レイはとっさに動きがとれなかった。
しかしここでも、羊の毛が絡みついた。蔓に火が移り、何重にも炎のクッションができていく。
そして蔓の鞭は、レイに届く前に動きが止まった。
「……何だと!?」
さすがのソフィアも、こんな一方的な戦いになるとは思っていなかったのだろうか。レイは、最後まで一歩も動かずに、最後の魔法の名を呼んだ。
「『インフェルノ』」
「……ああああああ!!!」
地獄の炎はソフィアを呑み込み、ソフィアは叫び声を上げた。
結局ソフィアは、最後にいた場所が海の上だったので、蔓から海へと落下して、『消火』という意味でも『落下の衝撃の緩和』という意味でも助かった。
……が、実はその火の粉が、俺たちに降りかかってきていた。
「ちょっ!僕の一張羅が燃えてるんですけど!」
「消火よ、消火!」
「海に落ちろ、テン!」
「さらに僕の服をダメにする気!?」
――結局テンのコートは、小さな穴が開いただけで無事だった。
下を見ると、レイがゆっくりとソフィアの元へ歩み寄っていた。ソフィアは水を吸い込んだらしくひどく咳き込んでいたが、自力で海岸まで泳ぎ着いていた。
「ゲホッ!……やはり君のほうが、何枚も上手のようだな……ゴホッ!」
「あー……大丈夫か?」
「……ソフィア……」
その様子を見たソラがソフィアに近づいて、背中をさすり始めた。
そこへ、もう1つ黒い影が近づいていった――モルガンだ。
「……貴様」
「ん?」レイはモルガンの方を向いた。
俺もモルガンの横顔を見たが、かなりの衝撃を受けていたようでこわばっていた。
「……その力は何だ?我が知る限り、おひつじ座の星霊使いでそこまでの力を持っていた奴は、他に1人しかいない」
「へー、ダレ?」――これは、あんまり興味なさそうなリアクションだ。
「初代のアリエス……奴も、相当な力を持っていた。12人いる星霊使いの中で、最も強かった……」




